アパグループ東京本社会議室で講演する米元首席戦略官スティーブ・バノン氏
3月8日、来日中のスティーブ・バノン氏がアパグループ本社にて講演会を開催し、中国共産党の脅威について指摘した。彼は中国を「自由のない閉鎖的な独裁社会」と呼び、中国共産党の真の意図を解き明かした。
トランプ大統領と安倍総理の最初の話題は「中国」
トランプ大統領の側近として政策決定に関与していたバノン氏は、「米国の工場労働者の仕事を中国から取り戻す」よう大統領にアドバイスしたという。また、世界で初めてトランプタワーを訪問し、大統領と会談した安倍総理も中国に対する警戒感を口にした。これを見ていたバノン氏は、日米両国が中国の国家戦略に強い関心を寄せていることを示唆した。
バノン氏が特に注目するのは、中国による「一帯一路」、「中国製造2025」、「5G通信技術」への投資だ。こうした中国の国家戦略には、地政学から得られた知見が応用されているとバノン氏は指摘する。
「マッキンダーのハートランド戦略、マハンのチョークポイント理論、スパイクマンのリムランド戦略といった地政学の理論家が提唱してきた考えを歴史上始めて採用し、経済や情報の戦争に活用したのが中国です。具体的には、『一帯一路』、『中国製造2025』、『5G通信技術』を通じて域内及びユーラシアの覇権を勝ち取り、最後に世界を支配しようとしているのです」
「米国の新政権は、伝統的にカナダやイギリスの首脳と会うのが通例です。しかし、我々はあえてこれまでの慣行を破りました。これは安倍総理に対するシグナルです」
デジタルデータは新時代の「プルトニウム」である
バノン氏は、中国の目標は「日本や米国を格下の国にすること」と喝破した。通信ビジネスの分野で急成長を遂げてきたファーウェイ社について、バノン氏はこう分析する。
「デジタルデータは新時代の『プルトニウム』です。したがって、ファーウェイは単なる企業ではありません。同社は人民解放軍の『表の顔』などと表現する人たちがいますが、そんな生易しいものではなく、人民解放軍『そのもの』です。結局、カナダ当局と米国司法省の勇気ある行為によってCFOが逮捕されましたが、それまでは世界的な詐欺行為が行われていたと言って良いでしょう」
最後にバノン氏は、共産主義の危険性を改めて強調するとともに、日本人に対して次のようにエールを送った。
「共産主義の圧政によって飢餓や紛争が引き起こされ、数億人もの人々が命を落としました。人類の歴史でこれほど多くの人が命を失うことは過去なかった事です。」
「現在の世界には、国民国家の体制のもと市民が結束する社会と、中国共産党のような自由のない閉鎖的な独裁社会があります。どちらが正しいのかは、歴史が判断するでしょう」
(現場取材・洪峰 / 記事作成・今野秀樹 / 写真提供・アパグループ)