中国共産党政権建立70周年を祝う軍事パレード中の中国共産党総書記の習近平(イメージ:YouTube Screenshot)

 中央軍事委員会の上将昇進式が6日午後、北京の八一ビルで行われた。習近平中央軍事委員会主席が、5人を中国人民解放軍で最高位の上将に任命した。上将の任命式は通例年1回、今回は7月に続く異例の2度目となる。

 上将に昇進したのは、汪海江・西部戦区司令官、林向陽・中部戦区司令官、董軍氏・海軍司令官、常丁求・空軍司令官、許学強・国防大学学長。

 これで5人の新職務が初めて公開された。つまり、今回の昇進式では、西部・中部戦区、海軍と空軍の司令官が交代したばかりであることを意味する。

 西部戦区司令官交代頻度が異例

 2020年12月、趙宗岐・前西部戦区司令官が高齢で引退し、同月に昇格した張旭東上将が後を継いだ。そのわずか半年後、まだ59歳の張旭東上将が解任され、その1ヶ月前に昇格したばかりの徐起零上将が後任となった。

 それから2ヶ月も経たないうちに、西部戦区では再び、徐起零上将(59歳)に代わって、汪海江(58歳)中将が司令官に就任した。2019年12月に中将に昇進した汪海江氏はチベット軍区司令官、新疆ウイグル自治区の軍区司令官などを歴任し、ウイグル問題や中印の係争地問題に精通している。

 8月末に米軍がアフガンから撤収し、現地ではイスラム主義組織タリバンの政権樹立を巡り混乱が続いている。新疆ウイグル自治区とアフガンは70キロメートル以上にわたる国境を接しており、習指導部はイスラム過激派の流入を警戒し、ウイグルの実情を熟知する軍幹部を充てて有事に備える動きだ。

 張旭東氏から汪海江氏まで、習近平氏は9ヶ月で3人の西部戦区の司令官を交代させたが、これは異常な頻度である。

 また、北京の安全保障に関わることから、中部戦区も注目されている。新司令官の林向陽氏は、昨年中将に昇進したばかりで、その約1年半後に上将に昇進した。これまでの「中将満4年で上将に昇進する」というルールを破ったのだ。林向陽氏は、習近平氏が第20回中国共産党全国代表大会で頼りにしたい将軍ではないかという憶測がある。

 5人の職務交代タイミングが異例

 習氏は就任して以来、いつもは、8月1日前か年末前の時期に上将を昇進させていたが、今年はこのルールを何度も破っている。これは中南海の政治的不安定さを反映していると考えられる。前回の抜擢は今年の7月5日だった。習氏は7月上旬に月例政治局会議を招集しないという異例の措置をとり、上将昇進式を通常の7月下旬から7月上旬にずらした。

 中国共産党中央委員会の機関誌「求是」8月号には、習氏最新の演説、および過去10年間に行われた19回の演説の特集記事が掲載されていた。この2つの重要な報道はいずれも「軍隊は党に従うべき」という主旨を繰り返している。 機関誌の動きは逆効果であるという見方がある。習氏がここ10年間で最も恐れていること、「軍隊が彼に忠誠を尽くすかどうかは定かではない」ことを明らかにした。これは、習氏の就任前に軍での人脈が非常に脆弱だったことと関係している。

 年内まで待ち切れず、9月6日に5人の将官を昇進させたのは、これからの中国共産党第19期中央委員会全体会議に関連していると考えられ、習近平氏が最も恐れていることが軍事力の掌握であることを改めて明らかにしたと見られている。

(翻訳・藍彧)