外務省は南太平洋の島国キリバスに大使館を新設することを決めた。この動きは同地域における中国共産党(以下、中共)の影響力の増大に対抗するためであると、読売新聞が5日に報じた。
キリバスは現在、フィジーの日本大使館が兼務している。外務省は数年以内に独立した大使館をキリバスに開設し、外交官を常駐させる予定。
中共は、欧米諸国との競争が激しくなるにつれ、この注目されていない地域で影響力を拡大している。キリバスは長年、オーストラリアやニュージーランドなどの国の「裏庭」となっていたため、太平洋諸国の多くは、同国が親中共政権国家になるのではないかと懸念している。
ここ20年間、経済成長に伴い、中共政権は徐々に世界に勢力を伸ばしてきた。中共は、経済を発展させる一方で、共産主義のイデオロギーを放棄していない。米国を中心とする民主主義国家と対抗し、最終的に全世界を支配することを常に目指してきた。毛沢東時代から習近平時代に至るまで、この目的は変わっていない。
米ソ冷戦時代とその後しばらくの間、中共は核の2次攻撃という戦略的原則を貫いていた。この原則によれば、米国などの敵国に1次核攻撃を行った後、米国の報復攻撃によって中共の陸上の核兵器施設はすべて破壊され、海のどこかに隠れている中共の戦略原子力潜水艦が敵国に2次核攻撃を行うことになる。
最近、中共の一連の行動は、中共が2次核攻撃の戦略原則を放棄し、積極的な攻撃の戦略原則に変わったことを示している。すなわち、中共の原子力潜水艦が先に米国に対して軍事攻撃を開始する可能性が高い。
2020年6月末に中共が公表した「北斗衛星測位システム」の完成である。中共自らの公表によると、同システムは中共の核ミサイル攻撃能力を遥かに向上させた。同システムの応用により、中共の大陸間弾道ミサイルは米国国内のあらゆる目標を正確に攻撃することが可能になった。
中共の大陸間弾道ミサイルが米国内のターゲットを攻撃するためには、米国の防空ミサイルシステムを回避する必要がある。中国本土から発射されたミサイルが米国本土に届くまで、比較的に長い時間が必要、その間、米国の防空ミサイルシステムは中共のミサイルを迎撃するのに十分な時間がある。したがって、中共が米国内の標的を攻撃するためには米国に近い太平洋のどこかの原子力潜水艦からミサイルを発射しなければならない。この戦略的目標を達成するためには、太平洋上に軍事基地を見つけることが最重要である。そこで、太平洋上に位置するキリバスは、中共の標的となっている。
キリバスは2019年に中華民国(台湾)と断交し、同時に中共と外交関係を樹立した。
中共政権は、第二次世界大戦中に軍用機が駐機していた飛行場を再利用し、キリバス領の島、カントン島で滑走路や橋を整備する計画を立案した、と海外メディアが報じた。
今年5月9日、英紙「デイリー・メール」の報道によると、同島はハワイの米軍基地の南西1,864マイル(約3,000キロ)の距離のところ、珊瑚礁の環礁があり、アジアとアメリカ大陸の間の戦略的な場所に位置する。
各国は、中国共産党が同島で空港を建設すれば、それが足がかりになると懸念している。中国共産党が飛行場を近代化・改良して使用可能な面積を増やせば、軍事的な利用も可能になる。また、同島はハワイ、オーストラリア、ニュージーランドを含む地域の間に位置する戦略的な場所であるため、偵察機の打ち上げにも使用できる。
しかし、中共の幹部らは、キリバスの地理的優位性を利用しているだけで、現地の住民を尊重していない。台湾の「自由時報」の報道によると、2020年3月に駐キリバスの中国大使唐松根がキリバスでマアマウ大統領と面会した。その後、飛行機から降りた唐松根氏の写真が公開され、インターネット上で広がった。写真では、唐松根氏は、地面に横たわる30名地元の若者で構成された「人体のカーペット」の上を歩き、伝統的な衣装を身にまとった2人の女性が横で彼を支えた。
I simply cannot imagine any scenario in which walking on the backs of children is acceptable behavior by an ambassador of any country (or any adult for that matter!) Yet here we are thanks to #China’s ambassador to Kiribati. https://t.co/HcJqfbaKzg
— Constantine Panayiotou (@CP_Suva) August 16, 2020
これは現地一部の島の歓迎式典だと言う人もいるが、地元の記者リム・リモンさんは台湾から来た中華民国の大使が過去に同じ島を訪れたことがあるが、同じようなことを見ていないと述べた。一部の地元住民はこのことに憤りを感じているそうだ。
この事件は多くの国の政治家を驚かせた。オーストラリア太平洋事務所の責任者は同様の式典に出席したことが一度もないと述べた。
「礼儀之邦(礼節や礼儀を重んじる国)」 と知られる日本が大使を常駐させるのは、政治、軍事、経済などに加えて、礼儀作法の面でも中共と争うだろう。
(文・黎宜明/翻訳・吉原木子)