アメリカ国立衛生研究所(パブリック・ドメイン)

 情報公開法(FOIA)によって公開された新たな文書によると、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、確かに中国の武漢ウイルス研究所に連邦資金を提供して、人間に感染するコウモリのコロナウイルスの研究を行っていたことが分かった。これまで、NIHやアメリカ国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の担当者らは、このような研究への資金提供を否定していた。

 調査メディア「ザ・インターセプト」は7日、アメリカ国立衛生研究所に対する情報公開法に基づく訴訟を通じて、アメリカ国立衛生研究所の未公開新情報を900ページ以上入手したと報じた。これらの新しい情報は、NPO組織エコヘルス・アライアンスがアメリカ国立衛生研究所からの連邦補助金を使って、中国の武漢で危険なコウモリコロナウイルスの研究に資金を提供していたことを証明している。

 900ページに及ぶ新しい文書では、エコヘルス・アライアンスの活動内容に加え、米国国立アレルギー感染症研究所から資金提供を受けたこれまで未公開の2つの助成金提案、およびエコヘルス・アライアンスの研究に関連するプロジェクトの最新情報などが詳しく紹介されている。

 同報道によると、アメリカ国立衛生研究所の助成金の1つは、「コウモリ・コロナウイルスの出現リスクを知る」というもので、数千ものコウモリのサンプルをスクリーニングして、新型コロナウイルスを検出するプロジェクトであるという。コウモリのコロナウイルスに関する助成金は、エコヘルス・アライアンスに総額310万ドルが提供され、そのうち59万9000ドルは武漢ウイルス研究所がヒトに感染する可能性のあるコウモリのコロナウイルスを特定し、改変するために使用された。このような実験の潜在的な危険性については、同助成金の提案書でも言及されており、「コウモリの密度が高い洞窟での作業や、(コウモリの)グアノダストを吸い込む可能性がある場合など、SARSや他のコロナウイルスにさらされる危険性が最も高いフィールドワーク」と説明されている。

 さらに、この文書には、武漢で行われたウイルス研究に関するいくつかの重要な情報が含まれている。例えば、ヒト化マウス(マウスの遺伝子・細胞・組織の一部が人間のものに置き換わったマウス)を使った重要な実験作業は、従来考えられていた武漢ウイルス研究所ではなく、武漢大学動物実験センターのバイオセーフティ・レベル3の実験室で行われていた。これらの資料は、パンデミック(世界的大流行)が実験室での事故から始まったのではないかという説に、さらなる疑問を投げかけている。

 文書が公開された後、ラトガース大学の分子生物学者であるリチャード・エブライト氏はツイッターで、「これらの資料は、助成金が武漢における新規のキメラ型SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルス関連コロナウイルスの構築を支援し、あるコロナウイルスのスパイク遺伝子と別のコロナウイルスの遺伝情報を組み合わせ、得られたウイルスがヒト に感染できることを確認したものである。これらの文書はまた、アメリカ国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長と国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が、武漢ウイルス研究所での機能獲得研究やパンデミックの可能性のある病原体の強化に、アメリカ国立衛生研究所は資金提供をしていないという主張が嘘であることを明確に示している」とツイートした

(翻訳・吉原木子)