CCPの政治スローガン(瑞丽江的河水, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons)

 中国共産党(以下、中共)の習近平総書記は、17日に開催された中央財経委員会会議で、「中国は、以前の先に豊かになれる者や地域を富ませることを認める(先富論)から、全国民の共同富裕を促進するへ(共同富裕論)と変換する。これは2つ目の百年目標だ」と宣言しました。習氏は「第一次分配、第二次分配、第三次分配」という制度の構築を明言し、税金徴収、社会保険、移転支払いなどの資産分配への調整に力を入れることを提唱しました。これに加え高収入を的確かつ合理的に調整し、高収入層の社会還元を奨励するなどにも言及しました。中共統治下の中国は、社会変革をせざるを得ないほど大きな貧富の差があり、これ以上見て見ぬふりはできないことが明らかになりました。

 習氏のいう「共同富裕」とはどんなものでしょうか。結果的に「共同富裕」になればいいものでしょうか。それとも、今までの社会資源分配の不平等を是正して再構築し、特権を無くし、機会平等な社会に努め、四十年間も不平等な待遇を受けさせられた中国国民全員に機会を与え、公平に競争させて豊かになることでしょうか。今はまだ読めないのですが、前者であれば、紛れもなく災難的な結果が待っているのでしょう。後者であれば、見守っていく必要があります。

 もし習氏が、汚職や不法経営などで、巨大な富を不当に手に入れた中国の政治家や財閥らの財産を再分配しようとしたら、それはそれで「盗人なりの道というものがある」とも言えるでしょう。しかし、合法的な営み、誠実に働き、老朽産業の振興を成し遂げ、法定の税金を納めてもなお巨大な富を正当に手に入れた企業家たちの財産であれば、どのような方法や言い訳であろうと、「再分配」は不法な強盗と何の違いもありません。民営企業家の孫大武さんはその典型的な一例です。

 中国で改革開放を敢行する鄧小平は1985年、先に豊かになれる者や地域を富ませることを認める(先富論)を提唱し、毛沢東の計画経済を徹底的に否定しました。改革開放を頑なに反対する中共内の反対派を押し切って、改革開放を推進するために、鄧小平は「マルクス主義原理によると、改革開放の正当性を判断する基準は、社会生産力の発展に有利かどうか、国民総生産の引き上げにつながるかどうか、国民の生活基準の改善に有利なのかどうかである」、「貧困は社会主義ではない」と指摘しました。こうして、中共内の反対派も反論できず、改革開放が推進されました。これだけを見れば、鄧小平の政策は、中共による国民への束縛を一部解消するのに、記録的な貢献をしたとも言えます。

 残念なことに、鄧小平の「思想解放、実事求是(事実に基づいて真実を求める)」理論は、人々の創造力に個体差があるという客観的な事実を無視していました。誠実に働き、合法的な経営をしたための労働所得が生み出した価値を、「私有財産は侵すべからざるもの」という視座から、法律の形で保護・承認せず、後に権謀術数を弄する者にはく奪されないようにはしませんでした。

 実際のところ、鄧小平の「先富論」にせよ、習近平の「共同富裕」にせよ、中共の「許可」が大前提です。豊かにさせたい相手が豊かになり、貧しくさせたい相手が貧しくなり、このような「許可」の権限がまだ中共の手にある以上、このような経済体制は本質上、変わった形の「計画経済」にすぎません。世界共通の「優勝劣敗」「需要と供給のルール」などのビジネスルールにしたがって、市場の自己調節機能を生かせることができない限り、中共統治下の中国は永遠に市場経済が実現できず、国民の運命は中共の手に握られています。経済にしろ、政治にしろ、全ての人が遵守すべき公平かつ公正な社会制度を作り、有効的な実行を監督できる社会こそ、国民の権利を最大限に守る事ができるに違いありません。

(文・陳光誠/翻訳・常夏)