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中国の通信会社・ファーウェイの最高財務責任者である孟晩舟氏の逮捕は、中国共産党がいかにして西側諸国へ電子機器を販売し、社会に浸透を図ってきたかを明らかにした。こうした中国の戦略について、カナダのジャーナリストである文達峰(ジョナサン・マンソープ)氏が著書で取り上げ、中国側の戦略を詳しく解説している。
アジアの国際情勢に詳しい文達峰氏は、2月2日、新しい著書「パンダの爪:中国によるカナダへの脅迫と影響」を出版した。 同書によると、カナダ以外にも中国が西側諸国に干渉した例は数多くあるという。
文達峰氏は、中国は政治・ビジネス・学術など様々な形態を通じて人々の生活に影響を与えると述べた。彼が指摘するように、中国は目に見えない方法で西側諸国に影響を与えようとしている。実際にファーウェイ事件によって、いかにして中国共産党と付き合うべきかカナダ政府が再考するきっかけとなった。
文達峰氏は、孟晩舟氏の逮捕や、中国=カナダの関係悪化に驚くことはなかったという。文達峰氏は「過去40年の間に中国とカナダは2国関係が発展したため、中国共産党に対して間違った期待をしていた」と指摘する。「カナダは法の支配と人権を尊重するが、共産党は法の支配を重視しない」
中国系カナダ人作家・盛雪氏は、中国共産党による国際社会への浸透は「非常に長期にわたる包括的なレイアウトである」と述べた。
盛雪氏によると、「中国は有毒なクモのように巣を張り巡らせ、世界各地に影響力を行使する基盤を作り上げた。既にご存知のように、こうした手法は非常に柔軟に利用されている。経済交流・貿易連絡先・科学技術・移民、そして観光など、すべてが中国政府の政治手段になり得る」
盛雪氏は、「文達峰氏の新しい著書は、読者に今日の理解を深める視点を提供するだろう」と説明する。西側の国々で、中国共産党はどれほど深くまで浸透しているのか。なぜ中国は民主主義国に浸透できるのか。こうした疑問に答えるため、盛雪氏は、「中国共産党の最も重要な問題を振り返らなければならない」と指摘する。
「中国は暴力的な独裁政権の統制下にある国だ。この暴力的統制の下にあるすべての物は、中国の『敵』を攻撃するための武器になり得る。ここには物だけでなく、中国の国民も含まれる。すなわち、科学技術・経済・移民など、すべての物事が中国共産党に利用される可能性がある。なぜなら中国ではすべての物事が共産党の統制下にあり、恐怖によって支配されているからだ」
カナダのアルバータ州議員・石清氏は、「中国共産党によるカナダへの影響力は以前から非常に強力だった」と述べた。
石清議員は次のように証言した。
「5年前の話ですが私がカルガリーの大きな教会に行き、その指導者たちと会った際、カナダの中国領事館はその事実を知っていました。もちろん、私は何か悪いことを話していたわけではありません。おそらく中国側は以前から教会の幹部と接触しており、私の行動を探っていたのでしょう。これは大変恐ろしいことです」
石清議員は、私の経験は一例にすぎないと指摘する。実際に、近年のカナダ政界では、中国の影響力が非常に大きくになっているとの声も聞かれている。Shi Qing議員自身も多くの事例を目撃してきたが、ファーウェイ事件によってこうした潮目が変わる可能性があるという。
「愚かにも中国共産党は、自らが行ってきたカナダ政界に対する浸透工作で失敗を犯したと言えるだろう。私の周囲の国会議員で、私と連絡を取らなくなってしまった人物は多い。中国によるカナダ政界への工作が明らかになるにつれ、私のような反中勢力と距離を置いているのだ。すべてのカナダの政治家は今こそ目を覚ますべきだ」
カナダの「ナショナルポスト紙」は、1月末、「中国情報機関 カナダで工作活動を実施」と題した記事を公開した。中国共産党は、孔子学院や中国系メディア、また中国人コミュニティを利用するだけでなく、政治家への賄賂など様々な手法を用いていると同紙は分析する。驚くべきことに、親中派の政治家だけでなく、保守系政治家も工作対象だという。
報道によると、不適切な演説によって解雇された在中国カナダ大使は、中国政府と親中国の団体から約120万円の資金援助を受けていたという。
中国はまた、カナダ系中国人を操作するために愛国心を奪うという方法を用いた。
前述の文達峰氏は著書で次のように述べる。
「中国は危険で恐ろしい国でしょうか?その問いに対し、私は、中国人は恐ろしくないと答えます。しかし中国共産党は絶対に危険で恐ろしい存在です」
カナダ政府は現在、ファーウェイ社を5Gシステムに参加させるか検討中だ。文達峰氏は「中国共産党は長年の間、ハードとソフトを組み合わせて人々に指示を出してきた。中国とファーウェイを信頼してはいけない」と説明する。
(翻訳・今野秀樹)