中国共産党総書記習近平(Kremlin.ru, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)

 中国共産党(以下、中共)の習近平総書記は17日、所得の規制や再分配など「共同富裕(国民全体が豊かになること)」の実現に向けた概要を示し、国内の富裕層に警告を発した。

 習氏は、中共中央財経委員会が17日に開いた会議では、「高所得の規制・調整を強化するとともに、法に沿った所得を守り、過度な所得を合理的に調整し、高所得層と企業に社会への還元を増やすよう促す」方針が示された。鄧小平が市場原理を利用して「一部の人や地域に先に富ませる」という先富論(注1)に対し、習近平氏は直接「手動」で「共産主義的な富裕」を作ろうとしている。

 中共の機関紙「新華社通信」の報道によると、習近平氏が主宰し、汪洋ら4人の常務委員が出席した会議で、習氏は「高所得層」や「企業」に直接語りかけ、「一部の人や地域を先に富ませることを認める」ことは、少人数の豊かさのためではなく、「共同富裕」であると強調した。

 中共の公式資料によると、いわゆる「共同富裕」は共産主義の趣旨から来ているという。中共の始祖であるカール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス、ウラジーミル・レーニン、ヨシフ・スターリンの理論に見られる。毛沢東が1953年12月に農業生産合作社(農業生産協同組合)の設立を提唱した際にも「共同富裕」という概念を導入したが、一連の運動の結果、中国の人々は「一穷二白(いっきゅうにはく)(経済的に立ち後れ文化的には白紙に近い状態)」になってしまったのである。鄧小平は権力を握ってから、改革開放を実施して「共同富裕」を繰り返し提唱し、労働に応じた分配の原則を適用し、市場ツールで経済を発展させ、「一部の人を先に豊かにする」と主張した。

 公式報道によると、習氏は今回の会議で、「課税、社会保障、移転支出などの強度と精度を高めに調整する」、中間所得層の割合を拡大し、中国社会を中間が大きく、両端が小さいという「オリーブ型」の分布構造に構築することを強調した。 重要なのは、低所得者の所得を増やし、「不合理な所得を一掃して規制し、所得分配の秩序を整頓し、不法収入の取り締まりを断固として行う」ことと、高所得者や企業に社会への還元を促すことである。

 ツイッターアカウント「王局志安」は、「1、高所得者はあらゆる租税回避(注3)行為を封鎖される。2、財産所得は固定資産税、投資、資産管理の所得など、いつでも課税される可能性がある。3、三人っ子の手当を支給する可能性がある。4、超富裕層に資産の寄付を促し、再分配を通して共同富裕を実現する」と分析した。

 別のネットユーザーは「中共はたくさんのお金を集めたが、国民生活に使う割合はごくわずかで、すべては建前上にやっただけで、そのお金はどこに行ったのか? 誰も恐れて聞けない」と返信してきた。

 より多くのネットユーザーは「企業の正当な収益をなぜ社会に多額に還元しなければならないのか?これはただの強盗ではないのか?要するに、今日は企業を襲えば、明日は国民を奪え、何の制約もないではないのか」と主張した。

 近年、中国の富裕層は政治的圧力を受けて、頻繁に自動献金をしなければならなくなっている。これはニラ(注3)を刈り取られることに等しい。、中共は今度、公然と「手動」で富裕層を刈り取ろうとしている。どこの富裕層を刈り取るかは中共が決める。本当の超富裕層は中南海におり、その中には退任した高官や国家公務員も含まれているが、歴年の富裕層リストからは賢明にも除かれている。

 注1:先富論(せんぷろん)とは、1985年頃から鄧小平が唱えた改革開放の基本原則を示すものである。つまり、先に豊かになった者が後から豊かになる者を導くこと、富裕層が貧困層を援助することを1つの義務にすることである。

 注2:租税回避行為とはどのような行為をいうのかについては法律上明らかにされていないが、一般的には、私法上の形成可能性を異常または変則的な態様で利用すること(濫用)によって、税負担の軽減または排除を図る行為をいう。

 注3:ニラは野菜の一種であるが、根の上の部分から切り取れば、また生えるという生態にちなんで、中国共産党が中国人を弄んでいるという喩えに使われている。

(翻訳・徳永木里子)