武漢で新型コロナの流行を報道したから中共政権に逮捕された市民ジャーナリスト張展氏(张举のTwitterより)

 報道の自由を擁護するジャーナリストの非政府国際組織「国境なき記者団」は7日、「The Great Leap Backwards of Journalism in China(中国のジャーナリズムの飛躍的後退)」と題した報告書を発表しました。

 同報告書では中国政府がジャーナリズムや情報取得権利に対する弾圧を強化していることや、香港の報道の自由が急速に悪化していることなどを取り上げたほか、中国は現在、「世界でジャーナリストを一番多く逮捕した国」であると明かし、マスコミ業界への抑圧は世界に広がっていると警鐘を鳴らしました。

 同報告書によると、中国政府がグレート・ファイアウォールやジャーナリストを「お茶」に招待したり、党の方針を勉強させたり、またインターネットの管理強化などの多様な方法を通して、情報統制と抑圧を行っています。

 また、「現在、少なくとも127名のジャーナリストが当局に拘束されている。『タブーな話題』を調査したり、検閲の必要な情報を発表したりするだけで、不衛生な刑務所に何年も拘束される可能性があり、虐待によって死に至ることもある」と指摘し、ウイグル人は監禁されているジャーナリストの半数以上の71名を占めていると明かしました。

 さらに中共はジャーナリストに「習近平の思想」の勉強を含む毎年90時間の研修を強要し、中共のプロパガンダに仕立て上げようとしています。

 このほか、検閲の対象が増えつつあると報告されています。常に、チベットや台湾、汚職などの問題が検閲されてきましたが、最近、自然災害や#MeToo(ミートゥー)運動、さらにはパンデミック期間中の医療専門家の意見もタブー視されています。

 昨年7月、香港版国家安全法が施行されて以来、 少なくとも12人の香港ジャーナリストや報道の自由を守る人たちが迫害を受けています。

 最後の独立系主流メディアであるアップルデイリーも強制的に閉鎖され、香港の公共放送局・RTHKも報道を検閲されています。 同報告書の執筆者で、国境なき記者団の東アジア総局長の セドリック・アルビアーニ(Cédric Alviani)氏は「香港は今、何らかの形で中国に消化されている。 あと数年で香港の状況が中国の他の地域と同じようになる可能性があると思う。それは大きな損失だ」と香港の現状を嘆いていました。

 アルビアーニ氏は、RFAに対し、中国政府による情報検閲の強化、報道・言論の自由の厳格化により、ジャーナリストが中国の現場で調査活動を行うことがますます困難になっていると明かしました。

 同氏は「道行く人は怖がって声をかけてくれないし、マイクやカメラを持ち出すたびに警察が来て、公式のソースに連絡して確認することもできない。 事実上、中国は北朝鮮のように新たな情報のブラックホールとなりつつある。 私達はグローバル世界に生きている。あらゆるところに中国がいて、中国と繋がっている。 中国の検閲制度は、中国の人々だけの問題ではなく、全世界の問題でもあるため、世界はこのようなことを許してはいけない」と語り、警鐘を鳴らしました。

 報告書によると、中国官製メディアであるグローバルテレビネットワーク(CGTN)は、今でも中共政権のプロパガンダ番組を世界中に放送しており、中国の外交団も、民主主義国における情報の自由を抑圧する要因となっていると指摘しました。

 中国のジャーナリズムにおける「飛躍的後退」について、国境なき記者団のクリストフ・ドロワール (Christophe Deloire) 事務局長は、「中国政府がその目標を達成するための莫大な資金と技術的資源を持っているため、より一層恐ろしいものに見える」と述べ、中国への警戒が必要だと示しました。

(新時代Newsより転載)