光学顕微鏡で見た炭疽菌の胞子(CDC, uploaded by en:User:MarcoTolo, Public domain, via Wikimedia Commons)

 北京市は9日、肺炭疽(たんそ)の患者1人を確認したと発表した。患者は河北省・囲場満族モンゴル族自治県で発症してから4日後に救急車で北京に運ばれた。現在、同症例は北京の病院に緊急入院し、隔離治療を受けている。公開データーによると、人体の複数の部位が炭疽菌に感染する可能性があり、中でも呼吸器系が感染した場合の致死率は85%に達する。

 9日、北京市疾病予防管理センター(BCDC)はウィーチャット公式アカウントで、同肺炭疽の症例が河北省承徳市囲場満族モンゴル族自治県で発生し、患者は現地で牛や羊、及びその関連製品との接触歴があり、発症4日後に北京市に緊急移送され、現在は隔離治療を受けていると発表した。

 BCDCによると、炭疽症とは、炭疽菌による感染症で、主に牛、羊、鹿などの家畜や野生動物の感染症であるが、ヒトに感染することもある人獣共通感染症である。そのうち、肺炭疽病(吸入型炭疽病)の場合は最も深刻で、致死率が85%に至る可能性があるという。

 公表された資料によると、炭疽菌は皮膚接触、呼吸器、消化管、注射の4つの経路で感染する。症状は通常、感染後1日から2カ月の間に現れる。皮膚に接触して感染した場合、最初は小さな水疱として現れ、その周囲が腫(は)れて壊疽し、その後、中心部が壊死して炭のような色をした痛みのない皮膚病になることから、この名前が付けられた。呼吸器系からの感染では、発熱、胸痛、呼吸困難となる。消化器系からの感染では、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れる。注射器系からの感染では、発熱、薬剤注入部位の膿瘍(のうよう)などが特徴的である。皮膚炭疽の死亡率は24%、腸管感染症の場合は、治療しても死亡のリスクは25%から75%、呼吸器感染症の場合は死亡率が85%にもなる。

 皮膚炭疽は通常、ヒトの感染症の中で最も多く、95%以上を占めており、手、足、顔、首、肩など露出した部分に発生することが多い。感染後、通常は発熱と悪寒があり、皮膚はまず発赤した斑点や丘疹(蚊に刺されたような傷)が現れ、その後、水疱ができ、さらに中心部が壊死して潰瘍状の黒い痂皮(かひ)を形成する。炭疽菌は放置すると危険で、死に至る場合もある。しかし、炭疽菌は細菌であり、様々な抗生物質で治療できる。発見したらすぐに医療機関を受診することが大切である。

(翻訳・吉原木子)