日本向け台湾産パイナップル(屏東縣政府, Attribution, via Wikimedia Commons)

 中国が3月、何の前触れもなく台湾産パイナップルの輸入を禁止した。これは、台湾に対して経済的に圧力をかけるためだったと広く見なされられてきた。しかし、台湾側の貿易データから見ると、中国の思う壺にはハマらなかったようだ。

 中華民国行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)が集計した1月から6月までの統計データによると、3月1日以降中国による輸入が停止してから、日本からの注文が殺到し、パイナップル輸出はかなり好調だった。3月から6月までの対日出荷は、前年同期比で8倍余りの1万6637トン(生鮮品および冷蔵品)に急増した。また、台湾政府による国内の消費促進の呼びかけも功を奏した。

 パイナップルは台湾の中部と南部の農家にとって重要な収入源である。台湾で収穫されるパイナップルの約11%が輸出され、輸入禁止令が出るまでほぼ全てが中国向けだった。3月1日、中国共産党政権は「バイオセキュリティーを守るための正当な予防措置」という名目で台湾産パイナップルを禁輸。現在、台湾産パイナップルの主な海外輸出先は中国に代わって日本となった。日本の輸入業者が差し伸べた救いの手は、台湾の農家にとってはサプライズだった。

 農業委員会の陳立儀委員は「出血事件に発展する前に歯止めがかかった」と述べた。

 また、日本の援助の他、SNSで広がった「農家を救おう」活動も、台湾国内消費者に農家への支持を呼び寄せ、国内パイナップル消費の促進に寄与した。同活動に蔡英文総統も参加し、台湾企業からの熱い支持もあった。えび団子、チャーハン、さらには牛肉麺など、台湾中の料理店が様々なご当地料理にパイナップルを使ったメニューを追加。台湾鉄道も、国産パイナップルを使った駅弁を限定販売した。

 その結果、パイナップルの3月から6月までの国内価格は28%上昇し、1キログラムあたり平均22.1台湾ドル(88円相当)と3年ぶりの高値を記録した。陳立儀氏が提供したデータによると、パイナップルの国内総売上額は17%増となった。同氏は「国内需要が好調なために価格が上昇し、農家の利益につながった」と述べた。

(翻訳編集・常夏)