加藤勝信官房長官( 内閣官房内閣広報室, CC BY 4.0 , via Wikimedia Commons)

 東京五輪の体操男子個人総合決勝で橋本大輝(19)選手が7月28日、中国の肖若騰(ショウ・ジャクトウ)選手に0.4の差で金メダルを獲得した。競技直後、多くの小粉紅(注)は中国の「グレート・ファイアウォール(防火長城)」を乗り越えてまで、インターネット交流サイト(SNS)で橋本選手への攻撃的な投稿や採点への不満などを書き込んでいた。これに対し、加藤勝信官房長官は7月29日、「差別的な書き込みなどあってはならない」と述べた。

 7月26日夜、卓球混合ダブルス決勝で日本が中国に勝利したことを受けて、ツイッターで、金メダルを獲得した水谷隼(じゅん)選手、伊藤美誠(みま)選手、橋本大輝選手を誹謗(ひぼう)中傷する内容の書き込みが相次いでいた。

 中共の機関紙「環球時報」は29日、審判が橋本選手に偏っていると非難した。これを対し、国際体操連盟(FIG)は同日、橋本選手の試合成績を公開し、ランキングと得点が「公平で正確」だとの異例の声明を公表した。しかし、多くの中国ネットユーザーは、日本選手が「偽のチャンピオン」で、中国選手の金メダルを盗んだと非難した。一部のアカウントは橋本選手を誹謗中傷する目的で作られたものもあるようだ。

 これに対し、加藤勝信官房長官は7月29日の記者会見で、選手への誹謗中傷内容の書き込みが相次いでいることについて、「東京五輪の基本理念は多様性と調和である。差別的な書き込みなどあってはならない。オリンピック憲章でも人種差別などが禁止されている」と述べた。また、「選手たちがこれまで積み重ねてきたトレーニングの成果を最大限発揮できるように、各界は全力で取り組む選手一人一人を愛を持って温かく見守ってほしい」と呼び掛けた。

 国立台湾師範大学東アジア学部の林賢参教授は、「これは戦狼外交の対外的な反射であるだろう。中国ネットユーザーは中国共産党に不利な意見は違っていると思い込み、強く反発する。中国公式の戦狼外交と民間社会の反応が互いに刺激し合い、悪循環に陥っている」と指摘した。

 注:小粉紅(しょうふんこう、シャオフェンホン)とは、中国語では「ピンクちゃん」に等しく、「未熟な共産主義者」であるという意味で使われている。

(翻訳・徳永木里子)