会議中の中国官僚たち(イメージ:Gisling / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0)
中国政府は、役人を密かに監督するために多くの場所で「ゼロ・トラスト(零信任)」という人工知能(AI)システムを導入したが、近日使用停止させられた。この「ビッグブラザー」が停止させられた理由は汚職を発見する効率が高すぎたためだ。外国のメディアは、AIシステムは30の地域で限定的に使用されたが、7年間で8,721人の腐敗役人を発見・検挙した。
香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト (South China Morning Post、南華早報) は2月4日、中国科学院と中国共産党の内部統制部門が150以上の中央政府と地方政府のデータベースにアクセスして公務員とその家族、親戚、さらに友人の個人データを収集し、社会的関係のネットワークと資金のフローチャートを作成した。そして、口座に大口の金銭が払い込まれた、あるいは不動産の譲渡、土地の取得、高級車の購入などの特定事項が発見されると、関係部門に通知される仕組みだ。
さらに、「ゼロ・トラスト」システムは、公務員とその家族、友人が政府のプロジェクト入札に参加しているかどうかも確認する。システムはまた、人工衛星によって撮影された写真やビデオを分析し、道路や橋梁建設の予算執行が妥当かどうか、そして計画外の再開発や再建があるかどうかを判断することによって、不当な予算執行を見つけることができた。
「ゼロ・トラスト」システムは、役人またはその親戚や友人の口座残高が異常な増加したり、新しい車を購入したり、または政府のプロジェクトを入札したなどのことを検出すると、自動的に不正の可能性を計算する。そして計算された結果があらかじめ設定された数値を超えると、関連する検査部門に通知される。
2012年以来、「ゼロ・トラスト」システムは、汚職や権力の濫用、政府の資金の濫用および不当な縁故主義などの不正行為をしている8721人の政府役人を摘発した。それらの大部分の官僚は警告や軽微な罰に処され、職を失うことはなかった。ごく一部の者のみが実刑を言い渡された。
しかし、このシステムの研究者たちは、システムの運用拠点が減少しているため、全国的に広めることは不可能であると考えている。
「ゼロ・トラスト」の由来は習近平氏が就任した時に掲げた「汚職に対しては一切赦しない(零容認)」という汚職防止運動であると報告されている。
ワシントン情報戦略研究所の李恒青氏はラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia)の記者に対し、中国共産党指導部がシステムを停止させたのは、共産党内の既得権益層の反発を恐れたためだと話した。「私は、政府も官僚の反応を探っているものと考えています。」
(翻訳・柳生和樹)