(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 1月24日、中国の「臓器狩り」問題や違法な「移植ツーリズム」について周知を行ってきた「中国における臓器移植を考える会(SMGネットワーク)」は、東京で台湾から専門家を招き講演会を開催した。また、同講演会には日本ウイグル連盟会長のトゥール・モハメッド氏も講師として来場し、新疆ウイグル自治区における最新事情をレポートした。

「移植ツーリズム」の法整備が進む台湾

 先進国の富裕層が、発展途上国の貧困層から臓器を買うために海外へ渡航することを「移植ツーリズム」と呼ぶが、これは世界各地で非難の対象となる人権問題となりつつある。特に、中国政府は移植ツーリズムを国家的に推進しているとの疑惑が持たれており、近隣諸国でも看過できない問題だ。

 台湾医学界の重鎮であり、中華民国政府監察委員であり、中華民国政府行政院衛生署(日本の厚生労働省に相当)で顧問を務めた経験もある張武修氏は、自身の経験も交え、「中国による違法な臓器移植を止めるには、近隣諸国が連携しなければなりません」と指摘する。

中華民国政府監察委員であり、中華民国行政院衛生署(日本の厚労省に相当)で顧問を務めた経験もある張武修氏

 張氏によると、台湾でも1968年ごろから臓器移植手術に関する医療技術が確立されました。そして1986年には『台湾医療措置法』が成立し、国家による法整備が進められました。その背景には、医療関係者から提起された倫理的問題や、臓器売買に関する懸念があったという。

 中国の『臓器狩り』に対する、張氏はこうコメントした。
「臓器移植には技術的・倫理的に検討すべき課題があります。また、臓器に値段が付けられ売買されているという実態もあります。実際に、中国では『臓器狩り』や人身売買が広がっています。こうした現状を受け、台湾では、臓器のドナー保護・人権保護の観点から『心停止患者』からの移植手術は行っていません」

 台湾政府は2015年に「臓器移植法」を成立させ、海外に在住する台湾人に対し、臓器移植手術を受ける際の報告を義務化した。

 世界の臓器移植関連法について、台湾出身の「臓器の強制摘出に反対する医師団」(DAFOH)のアレックス医学博士は次のように説明した。
「臓器移植手術については、世界的にも法律が未整備の国が多いのです。台湾のように政府への報告を義務付けるような制度が求められています」

 台湾では、1990年ごろから臓器移植手術を受けるため中国に渡航する患者が増加しているという。そして、中国への渡航者の中には日本人患者も含まれている。
アレックス博士によれば、これは中国政府の政策でもあるという。

 「中国は2001年から『移植ツーリズム』を国策として推進し始めました。それまで『臓器の提供元は死刑囚である』と主張していましたが、手術の増加件数と数が合いません。その後中国政府は、臓器の出どころについて口を閉ざすようになり、実態把握が困難になっています」
「米国やEUでは、議会が中国の『臓器狩り』を非難する声明を発表しています。こうした声は今後も高まっていくでしょう」

ウイグル「再教育キャンプ」の真の目的

 中国では、法輪功の学習者や少数民族などの「同意なきドナー」から臓器が摘出されているという。中国政府によるこうした行為は「人類に対する犯罪」とも呼ばれ、世界中で疑惑の目が向けられている。一方、この問題は今まさに現在進行形の問題でもある。中国共産党政府による厳しい監視下にある新疆ウイグル地区の人々もまた、この問題の被害者だ。中国共産党は新疆ウイグル自治区に「再教育キャンプ」を建設しウイグル人に対し迫害を行っていると指摘されているが、その現状について、日本ウイグル連盟会長のトゥール・モハメッド氏は次のようにレポートした。

「カナダに留学中の中国人学生が、衛星データなどを用いて『再教育キャンプ』の建設を確認しています。これが博士論文に書かれ、その存在が世界に知られるきっかけになりました」
「中国軍と現地の民間企業が、共同で工場を建設し、ウイグル人を強制労働させているのです。また2016年にはすべてのウイグル人に健康診断が実施され、そのデータは『再教育キャンプ』で管理されています。このキャンプの管理運営費を賄う目的で、ウイグル人の臓器が売買されている可能性が指摘されています」

 このような「ウイグル人管理政策」は、これまでの人類の歴史上みられなかった所業だ。こうした証言も氷山の一角でしかなく、どのような人権侵害が行われているのかすべてを知ることは現在のところ不可能だ。「臓器狩り」問題をはじめとして、中国では我々の想像を超えた政策が実行されている可能性がある。

日本国内の法整備を求めていく方針

 最後にSMG地方議員の会の代表世話人を務める丸山治章・逗子市議会議員は、同会の賛同議員が105名になったと報告した。また、SMGネットワークの代表で、外交評論家の加瀬英明氏は「現在の中国共産党政権はそう長く続かないだろう。日本の厚労省には臓器移植ツーリズムの実態を明らかにするよう働きかけたい」とコメントし、日本が中国の人権弾圧に加担するようなことがないよう、国会議員・地方議員が力を結集し、日本国内の法整備を求めていく方針が改めて確認された。

 中国共産党政府が行っているとされる「臓器狩り」問題は、中国人だけでなく日本人にとっても重大な人権問題だ。現在、日本でも国会議員・地方議員だけでなく、様々な団体や有識者らが全国各地で様々な取り組みを行っている。一方、この問題については海外でも様々な視点から検討がなされており、日本の臓器移植の方向性を考えるうえで、海外の臓器移植事情も参考になるといえよう。

(記者・今野秀樹 / 写真撮影・看中国 洪峰)