数人の友達を連れて、友人ののりこさんのお宅に、遊びにお邪魔しました。のりこさんの子供は、はいはいできるようになったばかりでした。私たちとのりこさんは、カーペットの上に座り、赤ちゃんと遊びながら、お茶を飲んでおしゃべりをしていました。
そんな中、のりこさんは突然、「お茶を飲むだけだとつまらないわ。茶菓子としてケーキを焼いてあげるね」と言いながら、立ち上がりました。
私は笑いながら止めようとしました。私が思うに、ケーキ作りは、時間もかかるし力の要る大変な仕事です。のりこさんがケーキ作りに行ってしまったら、赤ちゃんの面倒をちゃんと見れるかしらと不安になりました。
しかし、のりこさんは「カップケーキくらい、しゃべりながら作れるから大丈夫だわ」と平然と言いました。そんなあっさりとしたのりこさんに説得力を感じ、私は赤ちゃんの面倒を見ることにしました。
のりこさんはキッチンから、大小のボール、たまご、小麦粉と砂糖をカーペットに持ってきました。私たちと会話しながら、のりこさんはたまごを割り、卵黄と卵白を分け、それぞれかき混ぜました。
慣れた手つきでケーキを作っているのりこさんを、赤ちゃんも見入ったようで、とても静かでした。ケーキミックス粉すら面倒くさく思う私も、陰ながら感心していました。
のりこさんはたまごと小麦粉から混ぜ始め、いとも簡単にケーキ生地の仕込みを完成させ、型に流し、オーブンに入れました。
そしてしばらくしてから、ケーキの甘い香りが漂ってきました。
のりこさんは本当にお喋りしながら、こんなにも手軽に、全て手作りで、ケーキを焼き上げました。
「すごいですね」と私は感嘆しました。
するとのりこさんは、「じゃあ、逆に、ケーキを作るのに、一番大変だと思うことはなに?」と、私に笑いながら聞きました。
私は「たまごの泡立ちかな」と漠然と答えました。
のりこさんは声を出して笑いました。「なるほど!そうかもね!でもね、一番難しいのは、ケーキを作ろうと心に決めて、取りかかるまでが一番難しいと私は思うわ」とのりこさんは言いました。
確かにそうですね。完成されたケーキだけ見ると、ケーキ作りは難しいと思いがちです。しかしひとつひとつの工程は、誰にでもできることばかりなのです。その簡単な工程の集まりで、華やかな完成したケーキが生まれるのです。ケーキを作る前から、色々考えてしまうと、面倒くさいと思ってしまいます。しかし、ケーキを作ろうと決めたら、あとはレシピ通りにやればできることです。たまごの泡立ちなども、さほど難しくないはずです。
人生においても、ケーキ作りのような事がいっぱいあるかもしれません。「やりたいこと」を希望するだけで終わるのではなく、「やるぞ!」と決め、その意志をはっきりさせることです。つまり、本当に難しいのは外因ではなく、私たち自身が心に決めることです。ちゃんと作りたいという意志があれば、誰でも美味しいケーキを作れるのです。
さて、今度のケーキは何味にしましょうか――。
(文・青松/翻訳・常夏)