パトロール中の中国警察官(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 中国で信教の自由の監視を行うある雑誌によると、中国共産党は警察官に対し、法輪功やキリスト教などの信仰を支持する人々の逮捕について、実績が不足する警察官は解雇の対象になると脅迫しているという。

 遼寧省北東部の大連市のある警官が「Bitter Winter」誌に語ったところによると、中国共産党国家安全保障局は2018年9月、「四半期別 宗教闘争プラン」を発行したという。これは宗教関係者の「逮捕ノルマ」を列挙した文書だ。

「この評価制度では、宗教関係者の信仰度合いに応じて特定のスコアが割り当てられている」とBitter Winter誌は報じている。

 この制度の対象となっているのは、法輪功学習者・クリスチャン・ウイグル人・チベット人など信仰を持つあらゆる人々だ。

 Bitter Winter誌に掲載されている文書は、中国の警察による「逮捕ノルマ」を記録した初の証拠と言えるだろう。

 具体的には、法輪功学習者の場合、公安省の監視対象を逮捕した場合には20ポイント、地方レベルの公安監視対象の場合には10ポイント、市町村レベルの監視対象の場合には5ポイントが授与される。

 同誌は「宗教に対する迫害の度合いが大きければ大きいほど、高い得点が獲得できる」と指摘した。迫害の対象には、1990年代に中国で普及した伝統的心理鍛錬として知られる「法輪功」も含まれる。

警察官も脅迫の被害者か

 四半期ごとのノルマが達成されない場合、警察署長はその役職を解かれる可能性がある。ノルマを達成するために、警察署は逮捕歴のある人物の名前を地域や建物管理者に配布し、彼らが「疑わしい活動」に巻き込まれているのを見たら警察に報告するよう求めているという。

 大連市のある警察官によると、3冊以上の宗教書を所有している人物は逮捕の対象または国家安全保障局の尋問を受ける対象となる。

 同警察官を取材した雑誌「Bitter Winter」は、警察官も無実の人々を逮捕することを望んではいないが、ノルマを達成できなかった場合に待ち受ける結果を恐れているようだったと伝えている。

 警察署がノルマを達成できなかった場合、現場の警察官たちは、ノルマ以上の逮捕者を出した他の警察署から逮捕された人々の名前を買っていると証言した。なお、これには1名あたり約500元(約7,500円)かかるという。

 法輪功の迫害に関する情報を掲載するウェブサイト、Minghui.orgは、以前、現場の警察官たちの告白を掲載した(http://en.minghui.org/html/articles/2017/7/1/164478.html)。それによると、法輪功学習者を逮捕するために「ターゲット」を絞り込んでいたとのことだ。

強制労働、洗脳、時には死刑すら行われる迫害

 中国共産党の指導者であった江沢民は、宗教迫害を専門とする「610局」と呼ばれる秘密警察を発足させ、長年にわたって法輪功を迫害してきた。

 過去20年間にわたりMinghui.orgは、警察が法輪功学習者に対して強制労働所への拘留、修練活動の強制放棄を行わせていることを明らかにしてきた。また、「通常死」として処理されてきた事件が実際には「迫害に伴う殺害」であると伝えてきた。

 中国共産党は法輪功学習者を強制的に「洗脳」で改宗させてきた。洗脳を受けると、修練の慣行が失われるだけでなく、他の学習者を非難するよう仕向けられる。

 2018年に法輪功迫害に関する論文を執筆したカナダの学者、マリア・チェン准教授は「この洗脳キャンペーンの意図は法輪功学習者の根絶です」と語っている。

 Minghui.orgは2004年、遼寧省瀋陽市の刑務所で年間20人分の「通常死の割り当て」があると報じた。「通常死の割り当て」とは、実際には、警察が法輪功学習者を拷問・殺害しても、その人数以内なら黙認されることを意味する。つまり警察には、実質的に「死刑」を執行する権限が与えられているのだ。

 同様に、警察には「強制労働の割り当て」の権限が与えられているという。その一例として、2011年、山東省趙園市で50歳の農家の女性鍾兆芬氏が逮捕され、強制労働所に移送されるという事件が発生している。

 鍾兆芬氏の事件に関与した政府関係者は、Minghui.orgに対し次のように述べている。
「私たちは上司から4人分の強制労働対象者の割り当てを受けました。鍾兆芬氏はそのうちの一人です」

 チェン准教授のチームは次のように問題点を指摘した。
「洗脳を行う権限を与えているのは地方政府です。彼らはターゲットを確実に洗脳するためにあらゆる手段を使用するよう奨励しており、電気ショックや睡眠の妨害などの手段も利用しています」

(翻訳・今野秀樹)