香港の民主派紙「リンゴ日報(蘋果日報)」を運営する「壱伝媒(ネクストデジタル)」は23日夜、最後の編集作業を終え、24日付の新聞を最後に廃刊すると発表した。これは国際社会を揺るがし、日本、英国、米国、欧州、国際組織などが、中国共産党(以下、中共)政権が「香港国家安全維持法(国安法)」を実施してからの一連の取り締まりで、報道の自由が抑圧されていると批判した。クリストファー・パッテン元香港総督は、これは中共が香港が代表する価値を恐れていることを反映しており、さらには中共自身存亡の危機と捉えていると指摘した。
「リンゴ日報」は1995年6月に創刊された。創刊者の黎智英(ジミー・ライ)氏によると、「リンゴ日報」は民主主義と自由を掲げ、そのポリシーは「暗闇を照らす光となること」「政権を監督すること」である。そのため、「リンゴ日報」は創刊してから、政財界のスキャンダルや汚職を繰り返し暴露してきた。
2020年に国安法が施行された後、民主主義と自由を擁護する「リンゴ日報」は、当局の弾圧の的となった。前編集長で現在ネクストメディアの取締役会長の葉一堅氏は昨年、「リンゴ日報は言論の自由の橋頭堡(きょうとうほ)であり、リンゴ日報がなければ香港はさらに恐ろしい境地に陥ってしまう」と語った。
加藤勝信官房長官は記者会見で、「リンゴ日報」の廃刊について、香港の民主主義の発展と安定の基盤である言論・報道の自由が大きく損なわれたとし、「香港がこれまで享受してきた民主的、安定的な発展の基礎となる言論や報道の自由を大きく後退させるものだ。重大な懸念を強めている」と述べた。また、「言論および報道の自由が保護されるよう求め、国際社会と緊密に連携し、中国側に強く働きかける」とも語った。
「立場新聞」によると、BBCのインタビューを受けた最後の香港総督パッテン氏は、「リンゴ日報」の廃刊は「非常に残念に思う」とし、香港政府は命令に従っているだけで、裏にある北京政権の働きかけで、香港の自由と法治が破壊されていると述べた。パッテン氏は「香港は自由、法治、言論の自由などといった価値観を象徴しており、中共はこれらの価値観を非常に恐れており、『生存の脅威』と見なしている」と強調した。
米国務院はこのほど、香港当局が国安法を利用して、「リンゴ日報」を標的にした手口は「驚くべきことだ」と述べた。
欧州連合(EU)の香港・マカオ駐在事務所は23日の声明で、「『リンゴ日報』の廃刊は、北京が強行した国安法による、報道や表現の自由を扼(ヤク)殺し、自由で多元的な開かれた社会を深刻に損なっていることを明確に示している」と述べた。
英国人権団体である「香港ウォッチ(Hong Kong Watch)」は声明で、国際社会が「グローバル・マグニツキー人権問責法」を速やかに実施し、香港と中国の政府関係者に制裁を加えるよう求めた。
「リンゴ日報」の記者は香港人に向けて、「真実への道は長く険しいものになるに違いない。リンゴ日報は今日倒れてしまったが、真実を求め続け、不正や不公平に麻痺にならない限り、香港人は必ず明るい日の到来を迎えられる」と勇気づけるメッセージを発信した。
(翻訳・藍彧)