テスラ・ロードスター (2020)(Smnt, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 米国の電気自動車メーカーであるテスラモーターズにとって、中国はこの2年間、主要な市場となっています。北京はテスラ社に門を開いただけでなく、ブランドの地位を確保させ、はやく成長させるために一連の特典を提供してきました。

 しかし、つい最近、テスラの販売が好調であったため、突然、官製メディアに攻撃され追い詰められ、中国から追い出される可能性すらありました。

 台湾ニュースサイト「SETN三立新聞」の19日の報道によると、台湾で雑誌「財訊」の発行などを手掛ける財信媒体の謝金河・董事長は、テラス社の置かれた状況について、「テスラは中国で、『初めは育てられ、次は罠を仕掛けられ、最後に殺される』という死のスパイラルに陥っている」と指摘しました。

 テスラ社は今年、中国で多くの問題を抱えています。最も印象的だったのは、上海で開催されたモーターショーで、ある女性がテラス社の屋根に飛び乗って抗議したシーンが、中国で何度も放映されて、テスラのイメージに傷がつけられました。 その後、テスラは上海工場の拡張を中止しました。 そのうえ、中国では、軍人や公務員はテスラ車に乗ってはいけないという規則が公表されました。さらに中国当局はテスラに同社のデータを渡すよう要求しました。

 今の中共のテスラに対する態度は当初と大いに違います。謝董事長は「2017年、中国は、テスラを中国で工場を設立するために大々的に誘致し、上海自由貿易区の広大な土地を9億7000万元(約166億円)で大変安く提供し、さらに200億元(約3416億円)という超低金利の融資も提供してあげた。しかし、中国当局は部品を100%中国で現地調達することを条件にした。この条件によって、台湾の自動車部品産業がほぼ全部排除された」と明かしました。

 中国側のテスラ誘致の思惑について、謝董事長は「中国はテスラを利用して、中核となる電池から車両の組み立てまで、中国の電動車両 (EV)サプライチェーンへの支援を加速させていた。 それで中国の多くのEVメーカーが、わずか2〜3年の間に、増資、株式公開、急速な量産化を進めてきた。 電気自動車は半導体のように制裁されるものではなく、中国には大きな市場優位性があり、今はテスラを殺す機が熟しているように見える。中国でのテスラの良い時代はもう終わった」と指摘しました。

 テスラ社のマスクCEOの対応について、謝董事長は「2020年、テスラは中国で13万7300台を販売し、売上高は66億米ドル(約7275億円)と124%増加したが、好調な時期は長く続かず、今年は大幅に減少した」と語りました。マスクCEOが上海工場の拡張を止めたことから、「どうやら彼は狩りのエサにされていることに気づいたようだ」と分析しました。

この現象について、米保守系シンクタンクのハドソン研究所の上級研究員である余茂春氏は、テスラは中国がよく使っている「おとり商法(bait-and-switch)」という詐欺商法に遭ったと指摘しました。つまり、中国はまず外国企業、特に重要な技術を持つ企業をターゲットにして、最初に税制優遇措置や規制措置などのメリットを提供して、中国に誘致します。これらの外資系企業が一旦中国で成功し始めると、中国当局はこれらの外資企業の対中投資を条件として、直接的または巧に中国側の一連の要求に応じさせます。

 中国現地の大手企業アリババの創業者であるジャック・マー氏も中国当局から厳しい処分を受け、外資企業と同様、中国の現状から逃れることはできませんでした。中国市場で真の成功を収めるためには、中国の政治的スタンスを支持する必要がありますが、これは「深刻な問題」です。

(新時代Newsより転載)