(イメージ:bfishadow / flickr CC BY 2.0

 検索エンジン大手のGoogleは、多くの従業員と人権団体に強い反対を押し切り、「ドラゴンフライ計画」と呼ばれる中国専用検索サービスの提供に躍起になっているが、このことで苦しい立場に立たされている。創業以来、言論の自由を掲げて自らを誇ってきたGoogleは正しい進路を歩むのか。

大きくなるGoogle従業員の動揺

 11月末、Googleに対し「ドラゴンフライ計画」の終了を依頼する旨の書簡が公開され、同社の従業員から大規模な支持を受けた。その後同書簡は600を超える署名を集め、ネット上でも公開された。

 「『ドラゴンフライ計画』に対する私たちの反対は、中国だけに対するものではありません。私たちは弱い立場にある人々を監視・抑圧するために用いられるあらゆる技術に反対します。表現の自由を抑圧し、反体制派を監視しようと試みる国家は中国だけではないからです。『ドラゴンフライ計画』が実現されればそれが先例となり、Googleが他国からの同様の要請を拒否するのは困難になるでしょう」と同書簡は指摘している。

 同書簡はまた、中国が高度な技術を使用して国民に対する監視を強化し、個人情報を追跡していると強調した上で、「中国政府にユーザーデータへのアクセスを提供すれば、中国共産党が実施した人権侵害にGoogleが加担することになる」と主張した。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは「現状では、Googleが中国における言論の自由や人権弾圧の共犯者とされてしまう可能性があります。Googleは人権団体や自社の従業員から提起された懸念に耳を傾け、検閲機能を含む検索サービスの提供を控えるべきでしょう」とコメントした。

プライバシーチームを排除して進められる「ドラゴンフライ計画」

 Googleは「ドラゴンフライ計画」を秘密裏に遂行していると言われており、同計画からはセキュリティおよびプライバシーのチームが除外されていた。Googleは、「ドラゴンフライ計画」に関する情報が公開され、従業員から大規模な抗議を受けるのを恐れていたと報道されている。

 実際に同計画に携わっていた従業員の中には、「ドラゴンフライ計画」に関する情報の漏洩は秘密保持契約の違反に該当し、仕事を失うことになると警告された者もいたという。

 「Google経営陣は『ドラゴンフライ計画』に非常に敏感でした。同計画について話すとき、彼らは口頭でしかコミュニケーションを取りませんでしたし、重要な会議ではメモを取ってはならない旨の指示があったという情報もあります。同計画については、Googleの88,000人の社員のうちわずか数百人にしか知らされておらず、同計画に携わったエンジニアは、『Project Dragonfly』に関与していない同僚と話し合うだけでも仕事を失う可能性があると心配していました」とThe Intercept紙は報じている。

 Googleは2010年、中国による言論の自由の抑止を容認できないと宣言し、中国から撤退した。この大胆な動きによってGoogleは世界中から大きな称賛を受けた。しかし「ドラゴンフライ計画」によって、Googleは言論の自由を放棄してしまった。中国が「検閲版Google」の導入に成功すれば、他国からも同様の要求がなされ、インターネットの自由という非常に魅力的な理念が脅かされる可能性がある。

(翻訳・今野秀樹)