シャルロッタ・ターナー(Charlotta Turner)教授が学生を指導している(イメージ:ルンド大学)
これは映画で見られるような話しである。スウェーデンのルンド大学(Lund University)で化学を教えているシャルロッタ・ターナー(Charlotta Turner)教授は、教え子のイラク人の大学院生Firas Jumaahさんが家族と共にイスラム国に拘束されていることを知った。彼女は大学のセキュリティ部門と相談し、エリート傭兵チームを雇い教え子と家族を救い出した。イギリスメディア「デイリー・テレグラフ」が13日に報道した。
ことの発端はターナー教授が受信した一通のメッセージだった。ターナー教授は2014年にFiras Jumaahさんからのテキストメッセージを受信した。Firas Jumaahさんは、もし一週間以内に戻れなかった場合、彼は論文を完成することができないことをターナー教授に告げた。
Firas Jumaahはまた、彼と彼の家族は放棄された漂白工場に隠れていて、イスラム国の兵士たちが街の外で発砲する音が聞こえてくることを伝えた。
ルンド大学誌LUMの取材に対し「私は全く希望が持てませんでした」と話すFiras Jumaahさん。「私は絶望に陥りました。私はただ何が起きているのかを先生に伝えたいと思いました。 彼女が私たちのために何ができるのか分かりませんでした」
一方ターナー教授は、博士課程のFiras Jumaahさんが研究をあきらめざるを得ないことに憤りを感じていた。
「このようなことはまったく受け入れられない」とターナー氏は言った。「私は非常に怒った。イスラム国は私たちの世界に侵入し、博士課程の学生を危険に陥らせ、研究を混乱させた」
ターナー氏はすぐ上司に連絡し、何らかの措置を講じることができるかどうかを調べた。「これは基本的な人間性に関わる問題です。上司は私にゴーサインを出してくれました」と言った。
そこでターナー氏は、当時大学のセキュリティ責任者であるグスタフソン(Per Gustafson)氏に連絡を取った。「彼は使命感を持っていました。グスタフソン氏は、世界規模で輸送・保安業務を展開するセキュリティ会社と取引があると教えてくれました」
グスタフソン氏はセキュリティ会社と交渉し、救助活動を手配した。 数日後、Firas Jumaahさんが拘束されているイスラム国占領地に、完全装備の傭兵4人が乗り込んだ。
傭兵たちはFiras Jumaahさんを見つけ、彼と彼の家族をイラクのエルビル空港に護送した。
「私はこれほどの待遇を受けられるとは思っていませんでした」とFiras Jumaahさん述べた。「同時に私は母と妹から離れてしまったので、自分が臆病者のように感じられました」
Firas Jumaahさんと彼の家族は、一神教であるヤズィーディー教を信じている。 この宗教はイスラム国によって悪魔崇拝とみなされているため、迫害を受けた。 Firas Jumaahさんはイスラム国の兵士が隣の村に入ったことを妻から知らされた後、すぐにスウェーデンから帰国した。
「私の妻は完全にパニック状態になった。誰もがイスラム国の行為にショックを受けていた。私は飛行機に乗って彼らの下に急いだ。 私がそこにいないときに何か起こってしまったら、私はこれからどうやって生きていくことができようか?」とFiras Jumaahさんは言った。
幸運なことに、Firas Jumaahさんの家族はイスラム国の蹂躙を免れた。Firas Jumaahさんはスウェーデンに戻って博士号を取得し、現地の製薬会社で働いている。Firas Jumaahさんはその後、大学が支払った傭兵の料金に相当する金額を大学に寄付した。
このような親切なサービスを提供する大学はほとんどない。大学のセキュリティ部門のグスタフソン氏は、「これはユニークな出来事です。私が知る限り、このような支援を提供している大学は他にありません」とコメントした。
(翻訳・柳生和樹)