プーチン大統領と共に会見に臨む孟晩舟氏(イメージ・NTDTVスクリーンショット)
中国政府は、ファーウェイ(華為技術有限公司)のCFO・孟晩舟氏の逮捕についてコメントし、同氏が釈放されなければ「重大な結果」を招くことになるとカナダ政府に警告した。
中国外務省は8日、声明で「中国は拘束された人物の即時解放、また同人の権利が保護されるよう強く求める。さもなければカナダ政府は自らが招いた重大な結果に対し責任を負うことになるだろう」と述べた。
しかしながら、中国共産党政権はあることを無視している。それは、民主主義国家の政府は法的手続を曲げることができないという事実である。
カナダのシンクタンク「マクドナルド・ローリエ研究所」のマネージングディレクターであるブライアン・リー・クローリー氏は「これは典型的な中国の行動であると思う」と評した。
「中国政府は、周囲が政府に従うのは当然の事と考えています。すなわち、中国ではあらゆる機関は共産党の意向通りに行動することを求められるので、海外でも同じやり方が通用すると勘違いしているのです」
ファーウェイのCFO・孟氏は、12月1日、詐欺罪で逮捕され、米国への身柄引き渡しについて検討がなされている。孟氏は、イランとの取引を有すると伝えられている香港の企業・Skycom社とファーウェイとの関係について、米国の銀行に虚偽の情報を伝えた疑いが持たれている。孟氏はその主張を否定する。
孟氏の最初の保釈聴聞会は12月7日と10日にバンクーバーで開かれた。訴状通りの罪で起訴された場合、最大で30年の懲役が課される可能性がある。
また米国との引渡し条約の要件が満たされた場合、カナダ政府には引渡しを履行する義務が発生する。
犯罪者引渡が専門の弁護士・セス・ワインスタイン氏は「カナダと米国で行われた行為が犯罪にあたり、その行為に懲役刑が定められている場合、1年以上の懲役が言い渡されるのは間違いないでしょう」と指摘する。
また同弁護士は「外国でなされた行為がカナダ国内では犯罪にあたらない場合、カナダ当局は、孟氏は罪を犯していないと判断することもできます。しかし孟氏の場合、米国での詐欺事件について身柄が拘束されているため、カナダの司法当局が無罪と判断する可能性はほとんどないでしょう」と付け加えた。
ファーウェイは、元中国人民解放軍の任正非氏によって設立された。カナダや他の西側諸国の情報機関関係者は、中国のスパイ活動に使用される可能性があるとしてファーウェイが製造した機器の使用に懸念を表明している。そのため、諜報同盟「ファイブアイズ」諸国のうち、米国、オーストラリア、ニュージーランドは、5Gネットワークからファーウェイ製の装置を排除した。
中国では政治的動機で逮捕される
カナダのシンクタンクの責任者・ブライアン・リー・クローリー氏は、「孟氏の逮捕に関してカナダ政府を脅すならば、中国は法支配の下に運営される社会に対する無知をさらすことになるでしょう」と述べた。対照的に、「中国政府は外国人を政治的動機で逮捕しています。中国が国際社会でうまくいかなくなると、カナダ市民は突然、中国の法律に違反したとして現地でトラブルに巻き込まれることがあるのです」とも指摘した。
2014年、カナダ政府は「ナショナル・リサーチ・カウンシル」をはじめとするカナダの連邦機関に対してスパイ行為が行われていたという報告を発表した。その直後、中国に住むカナダ人夫婦がスパイ行為の罪で中国当局に逮捕された。妻のジュリア・ガラット氏は2015年に解放されたが、夫のケビン氏は2016年まで解放されなかった。
現在、中国では孫茜氏など、精神修煉の一種として知られる法輪功の愛好家たちが数多く拘留されている。ワイナリー所有者のジョン・チャンとアリソン・ルー氏は密輸罪で逮捕された。またウイグル出身の中国系カナダ人にも弾圧の手が伸びている。
米国はどう反応する?
孟氏の逮捕は、トランプ大統領と習近平主席がアルゼンチンで行われたG20首脳会議に出席し、両国首脳が貿易の緊張緩和に合意したその日に起こった。
ホワイトハウスは同会談の終わりで、両国が「米国側の懸念事項」について交渉を開始することに合意したと発表した。米国側の懸念とは、中国共産党に対する技術移転の強制、知的財産保護、非関税障壁、サイバー攻撃及びサイバー盗難などの脅威である。
米国の関係者によると、トランプ大統領は孟氏の逮捕を知らされていなかったという。
前出のクローリー氏によれば、孟氏の逮捕は米国基準での法令遵守を中国に求める流れの中で発生した事例の1つにすぎないと述べた。
「これは単なる貿易問題ではなく、これは米国法の適用にも関係する問題なのです」
「米国の法は、中国の権力者に対しても平等に適用されるだろうと私は信じています」
(翻訳・今野秀樹)