(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 古代インドのある王国にマンゴー園があり、その園主はアムロという名の美しく裕福な女性でした。

 彼女は生まれつき容姿が端麗であり、多くの人々を魅了しました。しかし彼女があまりにも風流であったため、軽蔑されることもありました。

 あるとき、ブッダ一行は説法するため王国をやってきて、マンゴー園に滞在しました。アムロはマンゴー園で収穫したマンゴーをお布施として僧侶たちに与えました。しかしアムロは依然として酒と遊びに入り浸り、欲望を放縦する生活をしていました。

 ある日彼女の召使いは彼女にこう言いました。「ご存知ですか?マンゴー園にやってくるブッダはかつて釈迦族の王子で、ガウタマ・シッダールタと呼ばれています。彼は王位継承権を捨て、出家して修行しています。今、王侯貴族と庶民たちは彼の名声を慕い、マンゴー園で説法を聞いています」

 王子が出家することを珍しく思ったアムロは王子を見に行くことにしました。しかしアムロの服装があまりにも綺麗で人目を引くものだったため、彼女は修行僧に止められてしまいました。

 そこに別の修行僧がやってきて言いました。「彼女を止めないでください。ブッダは彼女に会いたいと言っています」

 ブッダは木の下に座り、その周囲は光に包まれていました。ブッダを前にして、アムロは自分が付けている宝石が非常に醜く俗悪であることに突然気づきました。

 彼女は誘惑するような笑みを止め、恭しくブッダの前まで行きました。そしてブッダの足もとにひれ伏しました。ブッダが彼女に説法すると、アムロは恵みの雨を浴びるひび割れた大地のように、見る見るうちに善良な女性になりました。アムロは感謝の意を表すため、ブッダを宴会に招きました。

 人々は、ブッダがなぜこの風流な女性をそれほど大切にするのか分かりませんでした。

 ブッダは彼女の輪廻について語り始めました。アムロはかつて小鳥に生まれ変わったことがありました。彼女はほかの鳥たちと大きな森で暮らし、毎日自由に歌い、とても幸せでした。

 ある年の夏、天気は異常に熱く、空気も乾燥していました。そして強風が吹き始め、大きな森林火災が起きてしまいました。火はほしいままに森を飲み込み、鳥たちは大災難に直面しました。

 小鳥だったアムロはほかの鳥を救うため、自分の安全を顧みず、川に飛び込んで翼を濡らし、また強火が暴れ狂う森の上空まで飛んで行きました。そして翼を羽ばたいて水滴を落とし、火を消そうと努力しました。こうして川と火の海を数えきれないほど往復しました。

 他の動物たちがその様子を見てこう言いました。「小さな鳥よ。飛んで火に入る夏の虫を知らないのか。そうしたところで何の意味があるのか」

 小鳥は言いました。「火はまだ燃えている。私はこうして話す時間もありません。」そして小鳥はまた川に向かって飛んで行きました。

 この小鳥の誠実さに神様にまで伝わり、大きな雨で森林火災を消し止めました。あの時命がけで仲間を救った小鳥が、美しく裕福な女性アムロだったのです。その縁があり、アムロは今生幸運にもブッダの教えを聞くことができました。

 大きな災難を前にして、その小鳥の善良な心ははかなく小さいものかもしれません。しかしそのはかなく小さい心は、驚くべき強さを兼ね備え、肝心なひと時に皆を危機から救うことができたのです。

 この小鳥の純粋で善良な心は後に伝説となり、長らく生命の大切さと美しさを世に知らしめることとなりました。

(翻訳・襄讓)