Aさんが住んでいる町に一軒の豆腐屋さんがありました。この豆腐屋さんは、朝市のお客さんに、家畜や家禽の飼料にもなるおからをおまけしていました。おかげで屋台の前には、「豆腐を買うとおからがもらえる」と聞きつけた人たちが毎朝行列を作りました。
ある朝、Aさんが豆腐を買いに行くと、屋台の前にはすでに数人が並んでいました。Aさんは、「おからは数量限定で、列の前のほうにいる人しかもらえないのに、あなたたちはなんで並んでいるの?」と、後ろに並んでいる人に聞きました。彼らは、「おからがなくなったら、朝から並んでいる人は豆腐1丁2円引きで買えるからだ」と教えてくれました。Aさんは、「2円安くなった分、豆腐が小さくなる心配はないのか」と尋ねました。すると、並んでいた全員が「そんなことないよ。この豆腐屋さんは長い間ここで屋台をやっていて、信頼できるんだ」と口をそろえて言いました。その日、Aさんは2円安くなった豆腐を買いました。家に帰って量ってみると、確かに定価の豆腐と同じ重さでした。
そんなある日、Aさんは豆腐屋さんに、なぜ朝市でおからをおまけしようと思ったのか尋ねました。豆腐屋さんは、「お客様に対する感謝の気持ちからですね!豆腐を買いに来てくださるお客様がいるからこそ、私の生活があるのです。ですから、感謝の気持ちをこめて、このようなサービスをさせて頂きたいと考えました」と答えました。
豆腐屋さんの繁盛の秘訣は、この感謝の気持ちなのかもしれません。連日たくさんの人々が訪れ、豆腐がこんなに長く売れ続けることを、豆腐屋さん自身も想像できなかったことでしょう。人への感謝の気持ちを持って行動すれば、人に忘れられることはありません。
豆腐屋さんは、その後どこかに行ってしまいましたが、Aさんは今でもあの豆腐屋さんのことを思い出します。
(翻訳・玉竹)