マレーシアのマハティール首相(ウィキペディア パブリックドメイン)

 10月15日、タイで脱獄後マレーシアに逃亡した11人のウイグル人を解放したことを、マレーシアのマハティール首相が発表した。

 ロイター通信は先週、マレーシアが11人の拘留を解除したうえ、中国からの身柄引き渡し要求を無視しトルコに送致したと報じた。

 マハティール首相は記者らに対し「彼らはこの国で何も悪いことはしていない。したがって我が国は彼らを解放した」と短くコメントした。

 5月にマハティール首相が選挙で勝利して以来、マレーシアは中国企業と締結した200億ドル以上のプロジェクトをキャンセルし話題となった。今回の出来事も中国との関係を歪める可能性が高い。

 中国は10月12日、11人のウイグル人を解放してトルコに送るというマレーシアの決断に「断固として」反対を表明した。

 ウイグル人側の弁護士によれば、マレーシアの検察は人道上の理由でウイグル人に対する告訴を取り下げたと述べたという。マレーシアではムスリムが国民の大多数を占めている。

 ウイグル人らは11月、タイの刑務所の壁に穴を開け、毛布をはしごにして脱獄したのち、マレーシアに不法入国し拘束された。

 ロイター通信は2月、この件でマレーシアが中国から圧力を受けていると報じた。一部の西側の外交官らは、「ウイグル人を迫害している」と非難されている中国への送致を断念させようとマレーシア側に働きかけていたと言われている。

 中国政府は「潜在的なイスラム過激主義」に対する脅威を喧伝し、新疆ウイグル自治区のウイグル人やイスラム系少数民族に対し「暴動を引き起こす恐れがある」とレッテルを貼ってきた。

 今年8月、国連の人権委員会は中国に百万人以上のウイグル人が居住していると説明した。ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告によると、ウイグル人やイスラム教徒は「再教育キャンプ」と呼ばれる強制収容施設に収容され、イスラム式挨拶の禁止や中国語の学習、また共産主義の宣伝歌の斉唱などを強制されている。

 米議会は10月10日、ドナルド・トランプ大統領に法案を提出し、中国で行われている「重大な人権違反」を非難し、新疆の「再教育キャンプ」の閉鎖を求めるよう促した。この提案によって、米国製の商品・サービスを新疆政府の代理店へ販売することが禁じられたほか、新疆警察局を含む一部の中国企業に対する米国産機材の販売が禁じられた。この措置には、米国の技術が中国政府によるウイグル人監視に転用されるのを防ぐ目的がある。

 新疆ウイグル自治区では近年、警察署、街頭カメラ、セキュリティチェックポイント(電子身分証明書がスキャンされる)が数多く設置され、常時監視が行われる地域に変貌した。

 長年にわたって、数百~数千人規模のウイグル人が東南アジアを経由し秘密裏にトルコに逃れてきた。

 2度目の首相職に就いた93歳のマハティールは、イスラム教徒に対する迫害に対して支援の声をあげている。

(翻訳・今野秀樹)