かの有名な科学者・アインシュタインは、小さい頃、遊んでばかりいました。
このままではダメだとお母さんに何度言われても、アインシュタインは聞く耳も持たず、「僕の友達も同じだよ!」と反論していました。
そんなある日、お父さんはアインシュタインに、こんな面白い話をしました。
「昨日は、隣のジャックおじさんと一緒に、南の工場の煙突を掃除しに行ってきたんだ。あの煙突は、内側の一本のハシゴを使わないと登れないんだよ」
「そこでジャックおじさんが先に登って、私は後について登った。長かったな、あの煙突は!」
「掃除が終わったら、ジャックおじさんが先に降りて、私もその後についていった」
「煙突から出てきてから、ジャックおじさんの顔がひどく汚れていて、それを見た私は、もしかして自分も同じぐらい汚れているのかなと思って、近くの川に行って顔を洗いに行ったら、自分の顔はキレイだった」
「だけど、ジャックおじさんは、私のキレイな顔をみて、自分も同じようにキレイだと思っていただろうか、ただ手だけ洗って、顔は汚れたまま帰っていった」
「そしたら、顔が真っ黒なジャックおじさんは、街のみんなに腹を抱えて笑われたんだよ」
「いいか、息子よ」お父さんは真剣な表情で「君の鏡は、他の誰でもなく、君自身しかいないんだよ。他の人を鏡としたら、どんな愚か者でも、自分を天才だと思い込んでしまうんだよ」と、アインシュタインに言い聞かせました。
お父さんの話を聞いたアインシュタインは、すごく恥ずかしくなり、その日から、一緒に遊んでいた友達と離れ、勉強に熱心になりました。己を鏡として反省し続けたアインシュタインは、やがて世界有数の物理学者となりました。
(翻訳・常夏)