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 米国の関税措置により窮地に立たされている中国は、世界貿易機関(WTO)を通して米国に制裁を科すことを検討していると伝えられている。一方、トランプ大統領はウイグル人に対する迫害をテコにさらなる制裁を検討している。

WTOを利用する中国

 トランプ大統領は先日、テクノロジー分野の主要産業を対象とした2,000億ドル以上の関税を中国に課すと発表した。続けてトランプ大統領は、2,670億ドル分の中国製品に関税を課すことも宣言した。米国の積極的な動きに対し中国は防衛に徹している。

 米国による制裁措置を受けて、中国はWTOに注目し始めた。2013年にWTOに加盟した中国は、米国によって不当な関税を課されていると非難してきた。

 WTO加入によって有利に事を進めてきた中国は、「これまで米国はWTOの判決に従ってこなかった」と主張し、「中国は米国に対する制裁措置として米国製品に70億ドルを課す権利を有している」と表明している。米国はWTOと中国の主張を8月22日までに受け入れる必要があった。

 中国が主張を取り下げなければ、米国は中国からの輸入品に報復関税を追加するとみられていた。実際にトランプ大統領は、WTOがアメリカの利益に悪影響を及ぼすならば、WTOを離脱する考えがあると報道された。

 米政治メディアAxiosは、トランプ大統領と側近の次のような会話を引用している。
「私たちはなぜWTOに加入せねばならないのか。WTOは、世界の他諸国が米国を批判するように設計されている」

米国による制裁はまだ続く

 米国は、ウイグル人に対する中国政府の非人道な扱いを強調し、中国に圧力をかけ始めている。中国共産党政権は、100万人以上のウイグル人に信仰を放棄させ、共産主義への強制転向を目的とした大規模な収容所を開設したと言われているためだ。ウイグル人たちは中国の諜報機関による監視下に置かれており、あらゆる面で差別を受けている。

 ロイター通信は、国務省のナウアート報道官の次のような発言を紹介した。
「ウイグル人やカザフ人、またその他のイスラム教徒が、厳しい弾圧に悩まされていることを我々は憂慮している」
「 2017年4月以来、収容所で拘束されている人が何千人もいると報じるレポートが多く作成されている」

 米国は、「マグニツキー法」に基づきウイグル人に対する虐待に関与した中国人に制裁を科す可能性がある。これが実現すれば、米国政府は、人権侵害者を標的にし、米国における資産の凍結、米国企業との取引禁止、海外渡航禁止などの制裁を課すことが可能となる。

 この動きは中国政府に大きな圧力と選択を迫ることになるだろう。つまり、中国が米国に追加の制裁をかければ、その報復措置によって、中国の輸出業者の財政状況はさらに悪化する。アメリカの人道的要求に従うのならば、自国の輸出経済に回復の見込みが出てくる。果たして中国政府はどちらの選択肢を選ぶのだろうか。

(翻訳・今野 秀樹)