(イメージ / Pixabay CC0 1.0)
中国共産党政権は政治の分野のみならず、ビジネスの分野においても野心をむき出しにしている。そのため世界各国の政府は、中国企業に対する安全保障上の懸念を表明するようになった。特に米国、オーストラリア、インドは、自国で事業を行う中国のハイテク企業に対して不信感を露わにしている。
米国政府は中国企業に制裁を課している
米国は、中国のハイテク企業「ZTE」が米国内で活動を行うことを禁じた。同社が北朝鮮とイランに対する米国の制裁措置を妨害したのみならず、経営に疑わしい点があると判明したためだ。アメリカの科学ニュースのウェブサイトThe Vergeは、米国商務省による次のようなコメントを紹介している。
「ZTEは、米国が求めるテクノロジー企業として信頼できる水準に達していないし、そうなる気もないようだ」
ZTEは10億ドルもの巨額の罰金を払い、その後さらに4億ドルを供託したため、米国政府による禁止措置は解除されることになった。しかし同社は既に大きな被害を被っている。2018年の最初の6ヶ月間で、ZTEは10億ドルもの純損失を計上した。
米国による「制裁逃れ」という観点からいえば、同社はまだまだ綱渡りを続けている状態にすぎない。ZTEが米国の利益に反する行動を起こしていると疑われた場合、米国はいつでも禁止措置を復活させることができる。実際に、トランプ大統領は米国の安全保障に重大な影響を及ぼすという理由でファーウェイ(华为、Huawei)製品の使用を禁じた。
ファーウェイは米国連邦取引委員会(FTC)に対し、「米国の規制当局は、保護主義的な経済政策や安全保障上の理由を建前に、米国内でファーウェイ製品の販売を正当化している」と非難し、米国の法律は中国企業に対してフェアでないと主張した。
国家安全に関する法律ウェブサイトLawfareに掲載された記事は次のように指摘する。
「しかしファーウェイの行動は逆効果をもたらした。FTCは他の政府機関に助言を求め、同社に対してさらなる規制を掛ける方向に向かっていった」
中国政府が米国のハイテク企業に対し独自の検閲ルールを課していることを思い出せば、ファーウェイが発した「米国政府による制裁」に対する見解は皮肉めいたコメントのようにも思えてくる。
オーストラリア政府・インド政府も国家レベルで対応
8月、オーストラリア政府はファーウェイに対し、豪企業へ5G通信技術を提供することを禁じた。豪政府は、海外資本の通信設備メーカーは政府の国家安全基準を満たさなくてはならないと説明している。
中国政府は、自国のすべての企業は国内の諜報機関と協力しなければならないと義務づけている。つまり、オーストラリアでファーウェイやZTEが活動していても、中国の諜報機関からの要求を拒むことはできないのだ。
BBCは、Connectivity社のコンサルタント・マークニューマン氏の次のようなコメントを紹介している。
「通信設備が5Gに移行すると、ネットワークの大部分がソフトウェアによって制御されるため、誰がネットワークを管理し、どこから情報が発信されているのか特定しづらくなります」
オーストラリアでは、ファーウェイが5Gサービスを本格展開するための議論がすでに始まっているという。一方で、インドは中国製の通信設備に対する注意を高めている。
「これは、多くのことを考慮した上で政府が責任を持って取った行動です。ファーウェイはインドで非常に大規模な事業を展開しており、5Gネットワークの展開にも大きな役割を果たしているため、我々は非常に細部まで状況を把握することに努めているのです」と、Sunday Guardian Live紙はインドのセキュリティ施設の関係者による説明を紹介している。
2018年4月~6月の間だけでも、中国発のサイバー攻撃の35%がインドを攻撃対象としており、インド政府は中国のテクノロジー企業に対する不信感を強めている。そのため、インド政府は本音ではファーウェイに5Gサービスを提供させたくないのだろう。
共産党政権が中国で権力を保持し続け、情報の管理を要求し、演説の自由を抑制し続ける限り、中国企業に対する不信感を拭うのは難しいと言わざるを得ない。
(翻訳・今野 秀樹)