(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 会社のオフィスビルには、正面玄関と通用口の2つの入り口があります。そのため、駐車場からオフィスまでのルートは2つあります。

 私は最初、正面玄関を通っていました。ある日、「通用口を通ったほうが便利ですよ。回り道が少ないし、駐車場から少し近いですから」と、同僚のAさんに言われました。確かにその通りですし、特に天気が悪い日は、早くビルの中に入ったほうがいいので、私はその後、通用口を利用し始めました。

 そんなある日、出勤の途中で同僚のBさんと話をしながら、一緒にオフィスビルに向かいました。私がいつものように通用口に向かうと、Bさんに「どうして正面玄関から行かないのですか」と尋ねられました。「通用口のほうが近いから」と私は答えました。

 するとBさんは笑いながら、「確かに正面玄関から入るのは遠回りをしているように見えますが、実は苦労を省きます。通用口から入ると、勾配のある下り坂もありますし、ビルの中に入ってからは、階段を上らなければいけません。でも、正面玄関を通るなら、道はずっと平坦ですよ」と、私に言いました。Bさんの分析にも一理あると思いましたので、私も一緒に正面玄関からオフィスに入りました。

 実は、二つの道はそれぞれメリットとデメリットがあり、AさんとBさんの分析にもそれぞれ一理があります。正面玄関を通るのも、通用口を通るのも、それぞれ便利なところもあれば、少し不便なところもあります。私たちがどちらにするかを決めるときには、常に自分にとって一番いい選択をしようとします。

 そう考えると、この二つの道は、少し哲学的な意味を持つということになります。私たちはすべてのメリットを得ることはできません。一つの道を選ぶということは、もう一つの道のメリットをあきらめることです。どの道を選んでも「別の道を選ぶべきだった」と常に言われ、まさに人生と似ています。道は違いますが、行きつくところは同じです。私たちが葛藤するのは、もっと多くのメリットを得たいからです。

 しかし、完璧な道は存在しないし、どの道を選んでも、どこかで苦労することが分かれば、選択に悩むことがなくなるかもしれません。目的地がちゃんと見えていれば、そこにたどり着くルートは、そんなに複雑に考えず、もっと自由に、もっと余裕を持って選ぶのも良いではありませんか。

 私はこれからは、正面玄関も通用口も、両方通ると決めました。天気が良ければ、少し回り道をして正面玄関を通りますし、天気が悪ければ、近道である通用口を通ってより早くビルに入ります。

(文・青松/翻訳・心静)

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