(画像:Wikimedia JLHA3050 / CC BY-SA 3.0

 「植物は動物のように意思伝達できない」と人々は考えてきましたが、今までに行われてきた数多くの研究によってその常識は覆されつつあります。この度、最新の研究結果が雑誌に掲載され、植物は互いに意思伝達することができるという事実が明らかにされました。

植物の驚くべき意思伝達方法

 植物はどのようにコミュニケーションを取るのでしょうか?スウェーデン農業科学大学で生態学の研究をしているヴェリミール・ニンコビック氏(Velemir Ninkovic)の研究によると、植物は「根」を用いて周辺の植物と意思疎通を行っているとのことです。例えば、混雑した環境に置かれたと認識した植物は、周囲の植物に化学物質(シグナル伝達物質)を分泌し、その物質により周囲の植物は成長を促され、集団で生き残ろうとするそうです。

 英ガーディアン紙に対し、ニンコビック氏は次のようにコメントしています。
「私たち人間は、隣人と問題を抱えている場合、その場を離れることで問題を解決できます。しかし植物はそういうわけにはいきません。そのため植物はほかの植物との競争を避けて、将来の生存に向けた準備をするために、様々な化学物質を放出し互いにコミュニケーションしているのです」

 植物のコミュニケーションについてさらに解明を進めるため、研究者らのチームは毎日二つの植物の葉を互いに数分間接触させるという実験を行いました。

 つまり植物が他の植物に接触する状況を擬似的に再現しているわけです。実験中、植物は水耕栽培によって生育が管理され、どのような化学物質が放出されたのか検出できるようになっています。

 数日後、これらの植物は畑に移動され、どのような応答を示すかテストを受けました。その結果、研究チームは植物が生長戦略を調整していることを突き止めました。

研究者らのチームは毎日二つの植物の葉を互いに数分間接触させるという実験を行いました。(画像:Elhakeem A et al. PLoS One. 2018 May 2;13(5): e0195646. doi: 10.1371/journal.pone.0195646.)

 ニンコビック氏は現在、植物はどのようにしてシグナル伝達物質が自身にとって重要であると判断するのか、そして受け取った情報を用いてどのように行動を変えているのかを研究しています。

植物は何を伝えたいのか

 植物は、昆虫や動物ともコミュニケーションを取っており、特定の状況下では感情をも表現しています。「新鮮な刈り草の匂い」の原因を調べたところ、あの「匂い」は植物によって放出されたSOSのシグナルであり、病気になった草を食べる昆虫を引きつけていることがわかりました。

 例えば野生のタバコは同じような方法でSOSシグナルを発信しています。タバコスズメガという害虫に感染したタバコは、害虫の天敵を引き付けるために香りを放ち、葉が食べ尽くされるのを防ぎます。

 また別の研究によれば、植物は哺乳動物と意思伝達することもできるそうです。例えばネペンテス・ヘムスレヤナ(Nepenthes hemsleyana)という植物は、その凹状構造を用いて、コウモリから送られた超音波を反射し自分の位置を知らせています。こうしてネペンテス・ヘムスレヤナの周囲にはコウモリの糞が落ち、土壌が豊かになっていくのです。

ネペンテス・ヘムスレヤナという植物は、その凹状構造を用いて、コウモリから送られた超音波を反射し自分の位置を知らせています(画像:Wikimedia / CC0 1.0)。

 さらに、植物は互いにコミュニケーションを取って自分の仲間を探し出し、得られた情報を元に生き残るための戦略を決定していることも分かっています。

 カキレ・マリティマ(sea rocket plant)という花を用いて行われた実験では、生長に不適合な環境に置かれた個体は、生き残るために通常よりも早い速度で生長しました。しかし仲間と一緒に置かれた個体では、皆が生長できるようにそれぞれの個体の生長に抑制がみられました。

 こうした研究結果は世界全体が相互に接続されているという自然の美しさを我々に示してくれました。今後さらに研究が続くことで、私たちはより大きな自然の秘密を解き明かし、より持続可能なライフスタイルを生み出せるかもしれません。

(翻訳・今野 秀樹)