現代の社会では、両親が働きに出ている家庭はもはや当たり前とも言えます。その当然の帰結として、両親が長時間仕事で外出していれば、その分子供と触れ合う時間は短くなります。このような現代では珍しくない家庭の形態について、育児の専門家たちはあまり肯定的に捉えていないようです。

「愛情たっぷり子育て」のメリットは科学的にも証明されている

 愛情たっぷりに育てられた子供は正常な成人に成長し、反対に親の愛情を奪われた人々は、心理的に重大な問題を抱える傾向があることがわかっています。

  2013年に発表されたカルフォルニア大学の調査によって、親のケアの欠如や幼年期に虐待を受けた子供は、ストレスに敏感な成人へと成長し、多様なリスクを抱えやすくなることが明らかになりました。

 同調査の研究者の一人であるテレサ・シーマン氏は、「もし我々が血圧やコレステロールなどの個々の数値のみに注目していたならば、幼児期の経験がより広範な健康リスクに関連しているという事実を見逃していたことでしょう。我々は、幼児期の有害効果が将来の健康リスクとどう関係するのかを示したのです」と自身の研究の意義を述べています。

 

愛情たっぷりに育てられた子供は正常な成人に成長し、反対に親の愛情を奪われた人々は、心理的に重大な問題を抱える傾向があることがわかっています。(画像:pxhere / CC0 1.0)

 2010年に発表された別の研究では、500人が長期(出生から成人まで)にわたって観察されました。その結果、研究者らは、幼児期に母親から愛情を受けた人は、幸せな大人になる可能性が高いことを発見しました。またこうした人々は悲劇的な人生を送ることも少なかったそうです。

ボディタッチはなぜ重要か

 幼児教育の研究者たちは、子供の適切な心理的発達を促進するためには、新生児と母親との身体的接触が必要であると主張してきました。

 母親を奪われた子供たちを対象に実施された研究によると、研究対象となった子供たちからは、両親と同居していた子供たちよりもはるかに高いレベルのストレスホルモンが観察されたのです。

 カナダの聖フランシスコ・ザビエル大学で発達心理学の教授を務めるアン・ビグロー氏は、『サイエンティフィック・アメリカン』のインタビューに対し、「母親と乳幼児の身体的接触は赤ちゃんを穏やかにする効果がある」と述べています。アン教授は次のように説明します。

 「既に行われたいくつかの研究によって、母親のボディタッチが赤ちゃんの脳の発達を促進することが明らかになっています。おそらく、静かに眠る赤ちゃんは、それだけで脳の発達が促進されると考えられます」

 残念なことに、以前と比べて母親と乳幼児の身体的接触は少なくなっています。これは主に女性が仕事に多くの時間を費やす必要があるためです。そして、そのような環境の下で成長機会を逸するのは赤ちゃん自身です。

 

幼児教育の研究者たちは、子供の適切な心理的発達を促進するためには、新生児と母親との身体的接触が必要であると主張してきました。(画像:pxhere / CC0 1.0)

父親の重要性

 「父親なしの育児」も現代の悲劇的な傾向の1つです。こうした状況は裁判所が離婚を認め、母親を子供の唯一の親権者にするときに発生します。「父親」のロールモデルなしで成長した子供は、犯罪やその他の違法行為に関与する可能性が高くなると言われており、特にこの傾向は男の子に強く見られます。

 実際に父親なしで育った子供たちは、そうでない子供たちに比べ、30歳になる前に刑務所に収容される可能性が3倍高くなります。これは新しい発見ではなく、既に1829年にニューヨーク州オーバーン刑務所の職員によって研究が行われ、家族崩壊が犯罪行為の1つの要因であると認識されているのです。

 父親は小さい子供に恐怖と敬意を奮い起こす存在であり、そうした感情が子供を犯罪行為に向かうのを防いできました。現代の社会も、過去にそうであったように、家族の重要性に注目すべき時を迎えているのかもしれません。

 

(翻訳編集・今野 秀樹)