米国の技術封鎖は、中国の大手テクノロジー企業に大きな打撃を与えている。これに焦った習近平は最近、頻繁に「イノベーション」を提唱し、独自路線で研究開発を推進しようとしている。しかし、共産党の統治体制に由来する制約がイノベーションを阻害しているにも関わらず、共産党トップはその制約を取り払おうとはしていない。
第19回中国共産党中央委員会第5回全体会議は10月29日、北京で終了した。この会議に対する政府系メディアの報道ではは、「イノベーション」という単語が15回、「科学技術」という単語が10回も用いられ、中国を「イノベーション型国家の最前列」に発展させていくことが言及されている。
しかし、共産主義国にはイノベーションを阻害する制約がある。早くも4年前には、中国科学院の研究者が、インターネットの封鎖が科学研究のイノベーションを妨げているとの意見を習近平に直接伝えていた。ある研究者は、「インターネットの規制を厳しくすることは、科学研究に従事している人にとって大きな損失である。海外のウェブサイトを通じて、多くの技術先進国の現状と発展の傾向を知ることができる。 そのため、科学研究に携わる人が自由にインターネットを利用できるようにしてほしいという要望が出された」と述べた。その時,会場は賛同の意を示す拍手が鳴った。会議のあと、中国科学院の研究者78人が連名で習近平に書簡を提出、科学研究の向上と国際的な研究の成果を共有するためにインターネットの封鎖の解禁を求めた。
しかし、現在でもインターネットの封鎖は存在しており、海外のウェブページの閲覧は禁止されている。そのため、中国の人々は自由主義国の現状を知ることが困難で、自由にコミュニケーションや意見交換をすることができない。
米サウスカロライナ大学の謝田教授は、中国共産党体制は共産党至上主義であり官僚至上主義であるため、学術に対する抑圧が非常に深刻であると述べた。そのうえ、巨額の資金を投じてハードウエアを作り、さらには高給で優秀な研究者を雇うこともできるが、公開、公平、自由な環境がなければ、学術交流は実現できず、科学技術のイノベーションも得られないと指摘した。
謝田氏は、中国共産党はそのことに気づいているかもしれないが、権力を維持するためには思想への禁錮をあきらめるわけにはいかないと話す。学問や思想の自由が開放されると、必然的に体制にとって不利な意見も公開され、権威主義的な統治を危うくするからだ。そして、中国共産党の思想に対する禁錮によって、科学者たちは自由に表現・交流できず、新しい理論的発見もできない。「中国共産党のやり方は自分自身を『板挟み状態』の窮地に追い込むものであり、そこから抜け出すことは不可能である。」
(翻訳・藍彧)