(Pixabay CC0 1.0)

 唐代から清代まで中国では不動産は不移徙物とされた。売買は売主・買主の合意だけでは成立せず、買主が代価またはその一部、売主が「契」あるいは「券」という契約書を相手方に渡すことによって成立した。

 売買成立後、売主と買主は官司にその旨を届けだし、契税を納入する必要があった。届け出なかった場合や非合法の場合には所有権は売主へ返還され、合法の場合には税契が発行された。官印のある契は公証力があり、紅契と呼ばれた。官印のない契は白契と呼ばれた。

 契約に際しては仲介人や立会人が土地の測量や境界の検分に立ち会い、契約成立の日には契約成立を一般に知らせるため酒宴が開かれた。売買の効果としては、所有権の移転と勝手な解約の禁止、田宅の付随物の権利の移転がある。また、売主が買主に対して永代的に所有権を譲渡し、後から找価を要求しないという「絶売」の慣習もあったが、実際には複数回にわたり找価が行われていたという。

 二重譲渡は無効であり、売主及び二重譲渡を知っていた買主と仲介人は処罰された。買主が二重譲渡を知らない場合には日付が早いものを持つ買主に所有権が移転し、もう片方の買主は代価の返還を受ける。

 さらに、土地の所有者が相手方から財物を受け取る代わりに、土地を相手方へ引き渡し、後日財物を引き渡して土地を取り戻すことができる典という慣行があった。典は通常土地売買代金の半額とされ、期限付きのものと無期限のものとがあった。承典者はその地位を第三者に譲渡することもできた。

 また、抵当も今日同様存在していた。

注:
抵当:借金の際、金が返せなくなったら貸手が自由に処分してよいと約束する、借手側の品物。

(文・黎宜明)