タイのタムルアン森林公園内にあるタムルアン洞窟に閉じ込められた少年サッカーチームの13人が、2018年7月10日に奇跡的に生還したことで、世界中から注目を浴びました。実は、この遭難事故の背景には高僧クーバー・ブー・チャム(Kruba Boon Chum)氏に関わる不思議な物語がありました。
タムルアンには、もともとタイ語で「眠る美女(の山)の大きな洞窟」という意味が含まれています。言い伝えによると、昔ある王女が身分の卑しい馬方に恋をしていましたが、父である王は王女を貴族に嫁がせようとしていました。しかし王女はその恋人と王宮を脱出し、タムルアンにたどり着きました。ある日、王女が休息を取っている間に、食べ物を探しに出かけた馬方が、二人を探すために国王に派遣された13人の兵士に捕まり、殺されてしまいました。恋人を殺されたことを知った王女は、絶望の末自殺をしました。その時の、王女の体が山々に、流れた血がサーイ川に、血痕がタムルアン洞窟を形成したと言われています。
地元のサッカーチーム「ムーパ・アカデミー」のコーチ1人と少年12人の計13人は、2018年6月27日、練習の合間にタムルアン洞窟を探検していたところ、そのまま音信不通となってしまいました。
数日後、チェンマイにあるレストランのオーナーが「タムルアンの王女に夢の中で願いを託された」とフェイスブックに投稿しました。夢というのは、「クーバー高僧にタムルアン洞窟に尋ねるよう伝え、クーバー高僧が来れば、13人を釈放する」という内容でした。そのレストランのオーナーはフェイスブックで夢の内容を公開し、クーバー氏に13人の遭難者を救ってほしいと頼みました。
王女はまた、クーバー高僧にも夢で願いを託されており、クーバー氏はあの時の馬方で、彼女の夫だと言いました。クーバー氏に会うために300年も待っていたとのこと。遭難した12人の少年の両親や親戚の中にも、300年前に王女の夫を殺したという夢を見た人が数人いました。
クーバー高僧は2018年6月29日午後8時にタムルアンに到着後、一人で洞窟に入り、そして約2時間後に出て来ました。
翌日、クーバー氏は全ての弟子を連れて、タムルアン洞窟の前で亡き王女のためにお経をあげました。そして、記者に「子供たちはみな元気で、二、三日後には会うことができるので心配しないように」と伝えました。
そして2018年7月2日22時30分、ついに遭難した少年12人とコーチ1人を見つけ、7月10日に全員、無事救助されたのでした。
(翻訳・柳生和樹)