筆者は、AI(人工知能)について研究したことがありますので、AIの思考方法について少し詳しいです。ここで、AIに詳しくない方は考えたことがないかもしれない、グーグル社やツイッター社などの会社が中国共産党(以下:中共)に媚を売る理由を分析していきたいと思います。
多くの多国籍企業が中共に媚を売っている中で、なぜグーグルやツイッター、フェースブックなどの一流企業たちも中共に必死に媚を売るのでしょうか。
実はこれも、企業や政府の弱み・市場に付け込んで強要するのと同じく、中共は、「市場」に付け込んで一流のIT企業を誘い込んでいます。ただし、ここの「市場」は、今までの「中国市場」とは少し違い、商品の市場ではなく、データの市場の話になります。
普通の国では、ネットユーザーのプライバシーは政府の法律により保護されていますので、企業はユーザーのプライバシー情報の収集には注意深いものです。つまり、普通の国では、企業が収集できるデータは限られています。しかし、中共統治下の中国では、政府は国民のプライバシーデータを保護するどころか、自発的に、全面的に、系統的に収集しています。しかもそのデータは信ぴょう性とクオリティーも高く、中国の人口の数に相応してデータの総量が極めて膨大になります。
AIには大まかに二つの側面が含まれています。その一つはアルゴリズムで、もう一つはデータです。今までのコンピュータープログラムとは違い、AIではデータをすごく重要視しています。データのない方より、データのある方が、アルゴリズムの正確性がかなり高くなります。例えば、某消費者は某商品を購入するかどうかを予測する時、当該消費者の所得のデータのあるなしが予測結果を大きく左右します。AIは人間と似ています。より関係の近い人の好き嫌いが、多く分かればより判断しやすくなるのです。これと同じ、AIは、人に関するデータが多く収集すればするほど、その人の行為への予測がより正確になります。
そのため、中共が収集した膨大な量の情報データは、前述の一流のIT企業たちから見るとすごく魅力的です。情報データは利益に直結するのです。IT企業が収集したユーザーの情報データが多くなればなるほど、広告のアルゴリズムがより正確になり、ユーザーがその広告の商品を購入する可能性が高くなります。2018年のグーグルの広告収入は総収入の70.4%を占めます。ツイッターのその比率は82%で、フェースブックの場合はなんと98.5%を占めます。広告収入が総収入での比例は高くなればなるほど、AIとそのデータの正確性により依存するようになり、より多くの情報データを常に入手する必要が出てきます。
これとは対照に、アップル社のような他のIT系企業は、この点について中共に媚を売ることがありません。なぜなら、アップルの主な収入源は、iPhoneやiPadなどの機体の販売であり、広告とAIに頼ることがありません。しかしこの辺の企業も中共に媚を売り、中国の機体購入者を獲得する必要があります。マイクロソフト社もほぼ同じです。つまり、中共に媚を売る理由はそれぞれあります。
広告はあくまでも表面的な原因の一つにすぎません。もっと深い原因はというと、すべてのIT企業の存続は次世代のトレンドに乗れるかどうかにかかっていることを知っているからです。IT産業のトレンドは大まかに、1990年代のパーソナルコンピューター、2000年代のインターネット、2010年代のビッグデータ、そして2020年代の人工知能に分けられます。トレンドとともに起伏するこそがIT企業です。ですから、トレンドに乗ることが企業の存続の要です。
中共はデータ収集のために、全世界範囲に布石をしています。それが5Gプロジェクトです。5Gの科学技術の発展における作用は、4G時代では想像できないほど大きいです。中には最も重要なのはIoT(モノのインターネット)です。すべてのモノがインターネットに接続されているIoTでは、冷蔵庫、街灯、プラグ、自動車、あらゆる持ち物はもうすでに一つの仮想世界に存在しています。考えてみてください。この状況では、ユーザーから収集できるデータの量は、今のようにスマホから収集できるデータとは比べものにならないでしょう。そして、ユーザーだけでなく、ユーザーの周辺環境のデータ、同じ周辺環境における様々なユーザーのデータ、さらには様々な周辺環境のデータも簡単に収集できるようになり、根本的な変革を起こします。
当然ながら、中共のこの算段はアメリカに見破られました。中共の5Gが全世界範囲に応用されたら、全世界の人々が中共の監視下になります。そして、この中共の全世界5Gから、大手IT企業が取得できるデータの量は恐ろしいほど大きくなります。今までのデータの量は市民プールの水の量だとすれば、全世界5G時代のデータの量は太平洋のようになるでしょう。これこそ、中共が必死に5Gを研究し、それを「国家発展計画」にする根本的な原因です。もし中共の全世界5Gプロジェクトが成功したら、アメリカを簡単に潰すことができるでしょう。なぜならすべてのインターネットが中共の管理下にあり、アメリカの武器すら制御されるので、もはや戦いになりようがありません。
なお、5G以外にも、中共はこの手の事をすでに着手しているのです。ハッカーなどの手段により、アメリカ国民のプライバシーデータ、さらには政府しか保有していない機密データを全面的に窃盗していることに関するニュースが多くあります。2019年6月、アメリカ司法省の案件公表によると、中国のハッカーはアメリカ健康保険会社のデータベースに侵入し、8000万人のアメリカ人の医療情報を窃盗しました。2020年2月、アメリカの告訴によると、2017年、中共軍隊のハッカーは米国の大手信用情報会社・Equifaxのデータベースに侵入し、1.45億人の個人情報を窃盗しました。TikTokなどのスマホアプリからのデータ収集は言うまでもありません。アメリカからでさえ窃盗する中共です。他の国への窃盗行為も言わずもがな、容易に想像することができるでしょう。
まとめてみると、IT企業が制覇したいのは次世代・人工知能の時代であり、その時代で最も重要なリソース・全世界ユーザーのプライバシーデータを持っているのが他ならない中共です。
以上の観点から、大手IT企業が中共に媚を売る原因がどこにあるかを分析してみました。
(この記事は、著者の個人的な立場と意見のみを表しています)
(文・Allen Zhang/翻訳・常夏)