武漢大学マルクス主義学院の教授である曹亜雄が、癌の治療資金を募っているというニュースが注目を集めた。しかし、彼の募金活動はすぐに当局の圧力を受け、学校側や同僚も彼との関係を切り離した。中国共産党の思想を広める「導師」はなぜこのような仕打ちを受けたのだろうか。
近日、曹亜雄は有名なクラウドファンディングサイト「Easy Fundraising」で30万元(約470万円)を目標とした募金プロジェクトを立ち上げた。曹亜雄は癌に悩まされており、貯金の40万元(約630万円)を使い果たした。治療を続けるには、クラウドファンディングの「Easy Fundraising」に頼らざるを得なかった。
募金は順調に進み、3700回を超える支援が届いたという。しかし、この情報が広範囲に拡散し、大手メディアも注目するようになると、状況は一変した。
ラジオ・フリー・アジアによると、当局が武漢大学を通じて曹亜雄とその家族に圧力をかけた可能性があるのだ。現在、曹亜雄の家族は黙秘を余儀なくされ、当局は曹亜雄の募金活動に介入した。当局は治療費の支援を約束したが、実態は不明だという。
当局のこの動きは、曹亜雄自身が長年に渡り鼓吹し続けてきた共産主義中国の「優越感」に疑問を持たれないようにするためだという分析もある。さらに、共産主義の「敵対勢力に攻撃の口実を与えないようにする」ためのものとも言われている。
情報筋によると、武漢大学や関係各部門および彼の同僚はみな、曹亜雄の境遇に関心を持っていないと表明した。曹亜雄の所属するマルクス主義学院の党政府事務所の責任者は、曹亜雄のために寄付金を手配したこともなければ、彼のために寄付金をつのることもないと一線を画した。
公開資料によると、曹亜雄は法学博士で、哲学博士のポスドクであり、「社会主義と国際共産主義インターナショナルの有名な専門家」であるという。さらに、大学の国際的な学術交流と学生交流を促進するために、何年も前から海外にいたという。
曹亜雄はここ数年来の論文と活動により、中国共産党の思想体系に理論的な支持を提供してきた。中国共産党制度の優位性を宣伝し、カザフスタンなどの共産党孔子研究所で教鞭を執り、中央アジアでは共産党の「一帯一路」の推進に参与していた。
共産主義の優位性を鼓吹し続けてきた曹亜雄が、共産主義の恩恵を受けられないだけでなく、やっとの思いで手にした命綱まで共産主義に取り上げられてしまうとは、なんたる皮肉であろう。それとも出生からこの世を去るまですべて党の制御下に置かれることが共産主義の「恩恵」なのだろうか。
(翻訳・藍彧)